農山漁村の可能性を、挑戦する「あなた」のビジネスへ
農山漁村には、まだ十分に活かされていない資源やアイデアが数多く眠っています。INACOMEビジネスコンテストは、それらを「思いつき」で終わらせず、実際のビジネスとして社会に届けようとする起業家の挑戦**を後押しする場です。
2025年12月19日、東京・南青山のPASONA SQUAREで開催された本選大会では、150名以上の応募の中から一次・二次審査を通過した10組が登壇。アイデア段階から事業化フェーズまで、多様なチャレンジが一堂に会しました。
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「多様で質の高いアイデアが集結」──挑戦者たちへのエールで幕開け
大会冒頭では、審査委員長である大野泰敬氏(株式会社スペックホルダー 代表取締役社長)から、今回で7回目となるイナカムビジネスコンテストですが、「今年は特に多様で質の高いアイデアが集まった印象です」という言葉が贈られました。
会場には、これから事業を立ち上げようとする人、すでに現場で事業を動かしている人、それぞれの立場で農山漁村の未来を本気で考える登壇者の緊張感と熱量が満ちていました。
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アイデア部門:構想を「次の一歩」へ進める5つの挑戦
前半は、今後3年以内を目途に事業化を目指す「アイデア部門」5組が登壇しました。非接触型の土壌診断、発酵を活かした新農法、播種技術の革新、未活用ジビエ資源の循環、通い農による関係人口創出など、いずれも地域課題を起点に、実装までを見据えた具体性の高い提案が並びました。
単なるアイデア発表にとどまらず、「どう事業として成立させるか」「誰と組めば前に進めるか」といった視点が随所に盛り込まれていた点が、今年の特徴です。
スタートアップ部門:現場で動く事業が、次の成長フェーズへ
後半の「スタートアップ部門」では、すでに事業化されている5組が登壇。
移動式炭化炉によるバイオ炭事業、ティーカクテルという新市場の創出、循環型エネルギー×農業モデル、地域資源DX、森林整備と食・観光を組み合わせた薪火レストランなど、事業として動いているからこそ見える課題と可能性が共有されました。
審査では、社会性だけでなく、今後の成長性や拡張性にも踏み込んだ質疑が交わされ、会場全体が「次の一手」を一緒に考える空気に包まれていました。
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登壇者とビジネスプランの概要(発表順)
前半はアイデア部門5組の登壇者がプレゼンテーションを行いました。アイデア部門とは、今後(目途として3年以内)農山漁村の活性化につながる事業の立ち上げを考えている方、新たな分野での事業を考えている方が対象となります。
非接触土壌診断を核とした営農指導支援プラットフォーム SATSOIL三田琳太郎(株式会社SATSOIL)
衛星データ解析による安価・高精度・短納期の土壌診断データを基に施肥設計情報を提供し、従来の土壌サンプリングから脱却する営農指導支援プラットフォームを提案。JA・肥料販売会社向けに5,000円以内で1日以内に精度90%以上のデータを提供し、データ駆動型の営農指導普及を実現する。
日本の発酵力で大地を潤す「帯広発・水ナシ循環果樹園」
畠山真由(マーチインパレード株式会社)
水が引けない帯広の土地を活かし、発酵微生物で果樹を育てる新農法に挑戦します。まずはサジー・ハスカップ・ナツメなど乾燥に強い果樹を選びますが、将来は多様な作物へ拡大します。東京で酵素風呂店を運営し培った知見を応用し、同店の発酵米ぬかを堆肥化して根圏発酵農法を導入。北海道発祥とされている酵素風呂は日本の発酵力の象徴であり、水浄化にも微生物の分解力を活用。農業と水を支える温暖化時代の循環型モデルとして、観光体験や発酵果実商品の展開にも広げます。
播種から未来を変える-発芽制御ポリマーが切り拓く新しい農業
登米航(GerminaX(ジェルミナエックス)/北見工業大学浪越研究室)
播種時期を制御できるポリマーコーティング種子技術を活用し、稲・野菜など基幹作物に適用することで、農作業の労働分散と安定的な発芽・収量確保を実現する。農家の負担軽減に加え、適切な時期に発芽を促す仕組みを利用した生産量の増加実現の他に、法面緑化や災害復旧など農業以外の分野にも展開可能。地域の持続的な農業と環境保全の両立を目指す。
Zinnect×もぐジビエ~未活用ジビエ資源をつなぐ循環型プラットフォーム~
草刈美樹(創価大学経営学部安田ゼミ チームZinniia)
廃棄される「命」を「資源」へ活用し、消費者へ「安心」を届ける循環型プラットフォームを提案する。シカの解体・加工で生じる余剰部位の施設間取引(BtoB)を整備し、原料の安定供給と廃棄削減を両立。同時に、消費者の関心が高い「産地や添加物の有無等の安全基準」を記載したジビエペットフードの専門ECサイトを構築する。この仕組みにより、地域資源の有効活用と消費者への安心供給を両立させ、地域課題の解決へ導く。
「小規模・分散」の棚だが生み出す新産業-新潟県十日町市発・通い農・企業研修事業
星裕方(株式会社里山パブリックリレーションズ)
中山間地の棚田を舞台に、都市住民が耕作主体として参加する「通い農」文化を創出します。拠点施設「棚田ステーション」やIoTを活用した「スマート通い農」アプリ、企業向け棚田研修を組み合わせ、日本最大級の通い農プラットフォームを構築。担い手不足解消と関係人口拡大を同時に実現し、持続可能な地域経済と都市のウェルビーイング向上につなげます。
後半はスタートアップ部門5組の登壇者がプレゼンテーションを行いました。スタートアップ部門は、既に事業化が行われている取組(目途として事業開始から5年間以内)または、展開中の事業であり、更なる成長や発展が見込まれる方が対象となります。
移動式炭化炉で「捨てる」を「価値」へ変える、バイオ炭事業
外山由季(株式会社HATSUTORI)
HATSUTORIの独自開発した高効率・環境配慮型移動式炭化炉で、流木などの処理に困っている「ゴミ」をその場で炭化する。HATSUTORIの製炭炉は無電源で移動式のため、運搬不要でバイオ炭製造を木質不要材の発生場所で実施できる。作られたバイオ炭は土壌の質の向上、長期的な窒素固定の機能を持っていることから土壌改良剤等として活用され循環型社会の実現に貢献する。
ZEN TEA BREW-日本初のDIYティーカクテルキット。「個人で味わうお茶」から「仲間と乾杯するお茶」へのイノベーション
三浦弘平(株式会社dozo)
茶農家から直接仕入れした茶葉をドライフルーツやスパイスと組み合わせお酒で抽出する。水やお湯に比べ、カテキン1.4倍抽出(査読論文で実証済み)を活用したクラフトティーカクテルDIYキットKANPAIを開発・販売。グローバルで2020年頃から成長トレンドにある2兆円規模のティーアルコール市場に参入。茶農家として就農する中で、お茶の味の差別化に課題を見出し、消費を増やすために海外需要を掘り起こし、日本の茶葉輸出2.2%を成長させる。
気候変動を乗り越える-クリーンエネルギー∞グリーンサークル農業を社会のスタンダードに
犬飼 亮(八百富株式会社)
有機農産物を名古屋市内の飲食店・小売店へ、自社便にて小ロットで卸売しており、配送する際に、飲食店・小売店の調理等で排出される使用済み食用油を効率的に買取回収し、自社プラントにてバイオディーゼル燃料に精製、自社農場の農機具やボイラー燃料等に活用する新しいビジネスモデル「yaotomiNeSo※」を構築。使用済み食用油は、2023年より2025年までに約100店舗から回収し、1年4カ月で18トンのCO₂排出量削減を達成した。 ※yaotomiNeSo : yaotomi New Sustainable Org
agrinex suite × デジはるで「前売り型」地域資源DX
新垣裕一(テックベジタス株式会社/Digital Halusa協同組合)
agrinex Suiteは、圃場の生産記録→収穫予測→商品カルテ自動生成→B2B/B2Cの受発注・決済までを一体化したクラウド/アプリ群。Digital Halusa協同組合が入力伴走と販路開拓を担い、収穫予測に基づく予約販売でロスと機会損失を減らし、地域資源の価値を最大化する。
【QUEBICO】森とエネルギーを循環させる薪火レストラン
松本 潤一郎(株式会社BASE TRES)
自社で広葉樹の森を整備し、伐採した木を活用して薪火レストランを直営。キッチンにウッドボイラーを設置することで、調理・給湯・暖房を木質エネルギーのみで自立供給する。既存事業のMTBやカヤックフィッシングツアーを組み合わせた狩猟採取体験を融合させ【森林整備×食×観光】のコンテンツを構築。新たな雇用創出や地域資源を活かした付加価値のある商品づくり、カーボンニュートラルを実現する。
※登壇者氏名(敬称略)
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INACOMEビジネスコンテスト表彰者が決定!
10組の発表が終わり、審査を経て下記の通り各賞が発表されました。
最優秀賞
・三浦 弘平さん(株式会社dozo)/ZEN TEA BREW - 日本初のDIYティーカクテルキット。「個人で味わうお茶」から「仲間と乾杯するお茶」へのイノベーション【スタートアップ部門】
優秀賞
・登米 航さん(GerminaX/北見工業大学浪越研究室)/播種から未来を変える-発芽制御ポリマーが切り拓く新しい農業【アイデア部門】
・松本 潤一郎さん(株式会社BASE TRES)/【QUEBICO】森とエネルギーを循環させる薪火レストラン【スタートアップ部門】
審査員特別賞
・畠山 真由さん(マーチインパレード株式会社)/日本の発酵力で大地を潤す「帯広発・水ナシ循環果樹園」【アイデア部門】
・草刈 美樹さん(創価大学経営学部安田ゼミ チームZinniia)/Zinnect&もぐジビエ~未活用ジビエ資源をつなぐ循環型プラットフォーム~【アイデア部門】
・新垣 裕一さん(テックベジタス株式会社/Digital Halusa協同組合)/agrinex suite × デジはる で「前売り型」地域資源DX【スタートアップ部門】
INACOME奨励賞
・三田 琳太郎さん(株式会社SATSOIL)/非接触土壌診断を核とした営農指導支援プラットフォーム SATSOIL【アイデア部門】
・星 裕方さん(株式会社里山パブリックリレーションズ)/「小規模・分散」の棚田が生み出す新産業-新潟県十日町市発・通い農・企業研修事業【アイデア部門】
・外山 由季さん(株式会社HATSUTORI)/移動式炭化炉で「捨てる」を「価値」へ変える、バイオ炭事業【スタートアップ部門】
・犬飼 亮 さん(八百富株式会社)/気候変動を乗り越える-クリーンエネルギー∞グリーンサークル農業を社会のスタンダードに【スタートアップ部門】
INACOMEサポーター(協賛企業)賞
―NTTアグリテクノロジー賞(2名)
・畠山 真由さん(マーチインパレード株式会社)/日本の発酵力で大地を潤す「帯広発・水ナシ循環果樹園」【アイデア部門】
・登米 航さん(GerminaX/北見工業大学浪越研究室)/播種から未来を変える-発芽制御ポリマーが切り拓く新しい農業【アイデア部門】
―アグリ創研賞、JTB賞、三菱総合研究所賞、FUTURE TALENT STUDIO賞、パソナグループ賞、渡辺パイプ賞はこちら(PDF資料)
最優秀賞には、三浦弘平さん(株式会社dozo)の「ZEN TEA BREW」が選ばれました。審査員からは、日本のお茶の新しい価値を世界へ広げ、農家を支える成長が期待できる点が評価されました。審査員からは、お茶の新しい価値を拡げ、さらに、外貨を獲得していくようなしくみをつくり、衰退していく農家さんを助けることができるような成長を期待できる内容であると選定理由の説明がありました。
三浦さんは、受賞スピーチで「お茶業界は300年ごとにイノベーションが起きています。自分たちが次なるイノベーションを起こし、海外にお茶を輸出していきながら、お茶所としての静岡をもう一度盛り上げていけるようなビジネスにしていきたい」と語り、日本のお茶文化を盛り立てていく強い想いが伝わってきました。
審査委員長の大野泰敬氏は総評として、「本選に残った方も、残らなかった方々も、本当に良いビジネスアイデアばかりでした。年々社会課題が大きくなり、その課題を解決するために、みなさんが必死に考えているからだと感じています。今回、循環やテクノロジーをテーマとしたものがいくつかありましたが、今後、新しい技術だけでなく、オールドテクノロジーや、地域の人から話を聞く場をつくるなど、広い視野で物事を捉えてほしい。また、誰かの不得意を、誰かの得意が補うような連携が生まれたら良いと考えていますので、農林水産省やイナカム事務局などをぜひ頼ってほしいと話しました。
最後に、農林水産省 農村振興局 農村政策部 都市農村交流課 課長の廣川氏が登壇しました。
「農山漁村や生産者のための部署で働く者として、本日のピッチを拝聴し、本当に元気をいただきました。農村振興局では、食に焦点を当て、海外への輸出をさらに拡大し、多くの日本食を海外の皆さんに味わっていただきたいと考えています。そうした中で、本日最優秀賞を受賞された静岡の三浦さんのアイデアや、優秀賞を受賞された松本さんのアイデアをはじめ、後日改めて詳しくお話を伺いたいと思うビジネスアイデアがたくさんありました。今後さらに多様な人々が関わりながら、農山漁村を盛り上げていってほしいと思います」と述べ、登壇者や来場者に向けてメッセージを送りました。
INACOMEビジネスコンテストは、受賞するための場ではなく、事業を前に進めるためのスタートラインです。登壇したすべての起業家の挑戦が、これからどのように形になっていくのか。その一歩目として、今年の大会は大きな意味を持つ一日となりました。
まとめ
INACOMEビジネスコンテスト2025は、農山漁村に眠る未活用資源や地域課題を起点に、構想段階のアイデアを社会実装可能なビジネスへと育てることを目的とした全国規模のビジネスコンテストです。
2025年12月19日、東京・南青山で開催され、150件超の応募の中から選抜された10組が本選に登壇しました。
アイデア段階から事業化フェーズまで多様な挑戦が集まり、社会性に加えて、事業の成立性、成長性、拡張性、連携の組み立てまで踏み込んだ議論が交わされました。
本コンテストは受賞をゴールとする場ではなく、事業を次へ進めるスタートラインとして、起業家と行政・企業・地域をつなぐ実践的な場として位置づけられます。
FAQ
Q1. INACOMEビジネスコンテストとは何ですか?
農山漁村の未活用資源や地域課題を起点に、実装可能なビジネスとして社会へ届ける挑戦を支援する全国規模のビジネスコンテストです。アイデアを「思いつき」で終わらせず、事業化・成長までを見据えた設計と、起業家・行政・企業・地域の接続を後押しします。
Q2. 2025年大会はどんな開催されましたか?
2025年12月19日、東京・南青山で開催され、150件超の応募から一次・二次審査を通過した10組が本選に登壇しました。構想段階のアイデアから事業化済みの取り組みまで、異なるフェーズの挑戦が並び、発表と質疑を通じて「次の一手」が議論されました。
Q3. 参加部門はどのように分かれていますか?
今後おおむね3年以内の事業化を目指す構想段階の「アイデア部門」と、すでに事業化され成長・展開が見込まれる「スタートアップ部門」の2部門で構成されています。フェーズに応じた評価軸を設けることで、幅広い挑戦を同じ舞台で可視化しています。
Q4. 審査ではどういった点が重視されましたか?
社会性や地域課題への貢献に加え、事業として成立するか、どこまで成長・拡張できるかが重視されました。とくに「どう実装するか」「誰と組めば前に進むか」という連携設計が問われ、構想の新しさだけでなく、現場性・実行力・展開戦略まで踏み込んだ質疑が行われました。
Q5. 農水省はこのコンテストをどう位置づけていますか?
農林水産省は本コンテストを、農山漁村や生産者を支える新たな担い手とビジネスを生み出すスタートラインと位置づけています。食や地域資源を軸に、民間の創意工夫と行政の支援を接続し、国内外展開や持続可能な地域づくりにつながる事業創出を期待しています。