INACOME NIGHT 第4弾

第4弾のゲストは、株式会社ビタリー代表取締役CEOの片倉健氏。ワークショップを交えて、事業仮説のつくり方や、世界の新規事業のトレンドについてお話しいただきました。

日 時:2020年12月8日(火)19時~21時
テーマ:IT・デジタルを活用した新たな取り組み&世界の新規事業の事例紹介
ゲスト:株式会社ビタリー代表取締CEO 片倉健 氏

(プロフィール)
株式会社ビタリー代表取締役CEO。1986年生まれ。北海道札幌市出身。
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系コンサルティング企業のアクセンチュア(戦略グループ)、経営支援・M&Aアドバイザリー企業のフロンティア・マネジメントを経て、2013年にビジネス書籍の要約サイト『Flier』を共同創業。
同社退職後ビタリーを共同創業。DX・新規事業担当者向けのクラウド型ソフトウェア「IX(ナイン)」の開発を手掛け、ヘルスケア、商社、製造業など幅広い業界の事業企画を支援している。

【ウェビナー要旨】

事業仮説は一文で説明できる
まず、日本の大企業上位100社と、GAFA、マイクロソフトの時価総額を従業員数で割った、一人当たり企業価値を示したグラフを見ると、日本企業と比べてGAFAは圧倒的な水準にある。このグラフはアメリカ企業上位100社と比べてもほとんど同じ結果になる。
テクノロジー系企業の生産性が増加していることがわかるが、一次産業でもデジタルの活用が叫ばれている。今日は、「どの山に登るか」という、DX事業仮説をどうつくるかについてお話ししたい。
優れた事業仮説を生み出すといっても、ふと思いついた一つのアイデアにかけても、なかなか成功しないし、たくさんアイデアを出すのも大変。この作業を徹底的にシンプルにしようというのが弊社が開発したクラアウド型ソフトのアプローチ。
事業仮説は、文末を「説」にする形式のたった一文で説明できる。例えば「移動するときは、バスやタクシーに乗るよりも、近くにいる乗用車に乗せてもらう方が、素早く楽に移動できる説」はウーバー、「ビデオレンタルは、店頭に借りに行くよりも、オンラインでダウンロードする方が、利便性が高い説」はネットフリックスとなる。
海外のベンチャー企業2000社の新規事業を調べてみたが、99%はこれで説明がつく。
文の構造は「行為や業務は、過去の手法よりも、新しい手法の方が、利便性・生産性などが、高い説」。食べログだと「お店選びは、メディアの紹介よりも、消費者の口コミの方が、信憑性が高い説」となる。これは主語を変えるだけで別のビジネスになる。「お店選び」を「パソコン選び」に変えると価格ドットコムになるし、主語を「旅先選び」に変えるとトリップアドバイザーになる。
主語以降の3つは時代のトレンドを表している。「メディアの紹介よりも、消費者の口コミの方が、信憑性が高い」は、もう20年前のトレンドで、今ではAIによるレコメンドの方が信憑性が高いのでは、という流れになってきている。
このフレームワークは、BtoCだけでなく、BtoBのビジネスにもあてはまる。世界の新規事業2000社を分析しても、強いテンプテートというのは実は数十個しかない。
起業家が投資家に新規事業をプレゼンテーションしたり、社内で提案すると、大抵「なぜ今までなかったのか?」「本当に他にないのか?」と質問を受ける。この質問に対して「自分が最初に思いついた」と証明することは困難だが、「これまでは技術がなく不可能だった」と説明することができる。
「新しい手法」の部分に活用するテクノロジーはデジタルに限らないし、もちろん新しいビジネスの全てがテクノロジーの活用で生まれるわけでもない。「飲食店の椅子を撤去して美味しいものを立って食べる」とか、「ダイエットにパーソナルトレーナーをつける」というのは、テクノロジーではない。

優れた事業仮説3つの条件
まず「ある程度の規模感」。「ニーズはあるのか?」との質問には規模感の説明で対応できる。例えば「農村では8割の人が未だに今だに過去の方法で取り組んでいる」と言えば、市場の大きさを伝えることができる。
次に、「10倍の改善可能性」があること。これは結構ハードルが高い。環境負荷を10倍低減できるとか、10人でやっていたことを1人ででき、労働生産性が10倍になるとか、そういうことが当てはまる。
そして「技術的に実現可能であること」、この3つの条件を満たす必要がある。
私は類似の仮説に基づく微妙な差のサービスが国内に乱立していて、多くの企業が消耗していることに強い課題意識を持っている。むやみに競争するのではなく、各社がクラウドに「説」を貯めていくことで似通ったものがあれば、競合しない会社同士なら組んでやってはどうかというアプローチをしている。INACOMEでも起業者が互いに説を持ち寄り、協働して取り組むことができればいいと思う。
それではこの後、チームに分かれてワークショップ「自分の仕事を『説』で表現する」を行いたい。皆さんぜひやってみてほしい。

— ワークショップ「自分の仕事を『説』で表現する」 —

海外事例に見る新規事業のトレンド
最近は、BtoCと比べると、BtoBの新規ビジネスがより盛んになっている。海外ベンチャーの事例を見ていくと、8割くらいはBtoB系になっている。その方向を大まかに分類すると、農業、製造業など業種にかかわらず、人がやっていたことを「AI・ロボット」が行うトレンドがある。それから、クラウド化や設備・データのシェアなど「ツールの高度化」があり、そしてウーバー・イーツなど、人が行う場合には、正社員ではなく、個人事業主に外注するというトレンドも強まっている。
今日は、四つの枠にことばを埋めるだけで事業仮説ができることをお話ししたが、皆さんもぜひ“スジ”のいい仮説に時間を割いてほしい。

— 海外事例紹介 —

(INACOME運営事務局より)
ウェビナーでは片倉氏から海外ベンチャー企業の最新事例を数多くご紹介いただきました。詳しくはぜひ当日のアーカイブ動画をご覧ください。