INACOME NIGHT 第3弾

第3回のゲストは、こゆ財団代表理事の斎藤潤一氏。自身の経験をもとに、起業にあたって留意すべき事柄や、地域で農林水産業ビジネスを行うことへの思いを語っていただきました。

日 時:2020年11月24日(火)19時~21時
テーマ:起業支援について
ゲスト:こゆ財団代表理事 斎藤潤一 氏

(プロフィール)
1979年大阪府生まれ。米国シリコンバレーのITベンチャー企業でサービス・製品開発の責任者として従事。帰国後、2011年の東日本大震災を機に「ソーシャルビジネスで地域課題を解決する」を使命に慶應義塾大学や全国各地の地方自治体と連携して起業家育成に取り組む。
これらの実績が評価され、2017年4月新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任。1粒1000円ライチの開発やふるさと納税で寄付金を累計50億円集める。結果、移住者や起業家が集まる街になり、2018年12月国の地方創生の優良事例に選定される。
メディア掲載:テレビ東京「ガイアの夜明け」、地域プロデューサーとしてNHK WORLD世界17か国で紹介「Targeting the Future of Farming Areas: Regional Producer Junichi Saito」、日経MJ(1面全面)、日本農業新聞ほか多数。

【ウェビナー要旨】

自己紹介が全て
私の講演やセミナーは、YouTubeで見ることもできる。ブログでは細かいノウハウも全部公開している。だから今日のこういうセミナーで大事なことは、インタラクティブに進めること。ただ聞いているだけではあまり勉強にならないので、できるだけインタラクティブに進めたいと思う。
非常勤講師をしている慶應義塾大学には、「半学半教」といういいことばがある。教えることは一番学ぶことで、学ぶことは一番教えることだと。自分も皆さんと一緒に学びたいので、ぜひチャット欄も活用してほしい。
起業で大事なことは、1パーセントの可能性をどれだけ積み上げていくかだと思う。そういう意味で、この勉強会に来ている時点で、皆さんはもう1パーセント、一歩踏み出していてすごいと思う。
起業家は、夢みたいなことを言って、夢みたいなことをやるというのも、すごくいいと思う。起業するにあたっては何も会社を辞めなくてもいい。今は副業や兼業が広がっているし、ワークライフバランスという面白いことばを政府がつくってくれてもいる。
さて、ここで自己紹介したい。自己紹介というのは、どれだけグッとハートをつかめるか。私は自分を紹介するスライドに「ビジネスで地域課題を解決する」と大きく書いている。私はこれを人生をかけてやっていこうと思っている。
起業しようというのなら、まず「何々の専門家」と書けることが重要で、すごくなくてもいいので、それをまず書いてみる。ビジネスというのはものすごく簡単で、要は課題に対して価値を提供するから、お金を払う。何も持っていなければうまくいかないが、専門家は価値を持っている。
「ビジネスで地域課題を解決する」ということを10年くらい言い続けているが、最初は行政の人に言っても門前払いだった。「ウチは儲けちゃいけない」と。それが今や、どうすれば稼げるか、持続可能な地域になるかと当たり前になっている。
起業したての時期には、この自己紹介スライドがとても重要。ベンチャー投資は、ほぼ「人」に投資をする。だから自己紹介が全てと言っても過言ではない。
私は東日本大震災の震災ボランティアをきっかけに、日本の地域づくりに貢献したいという気持ちが芽生えた。地域が持続可能になるにはビジネスの仕組みが必要で、自分がシリコンバレーで得たスキルや経験を生かしたいと。起業家は、こういう「なぜやるのか」という原体験などをプロフィールに書くことも大事。起業するとなったら、ぜひ自分の自己紹介スライドをつくってみてほしい。

一歩踏み出す
なぜ宮崎県新富町なのか、なぜこゆ財団なのかとよく聞かれるが、結論から言うとそれは岡本啓二という「人」。いろんな人と仕事をしてきたが、こんなすごいスーパー公務員はいないんじゃないかと思うほどで、彼となら「ビジネスで地域課題を解決する」を実現できそうだと思ったのが理由。起業するならどこでやるかよりも、誰とやるか、これをまず決めたほうがいい。
「事を起こす」ということは、一歩踏み出すこと。これが本当に大事。グーグル創業者のラリー・ペイジも「アイデアに価値はない。思いついたら即行動」と言っている。1ミリでもいいので、動いてほしい。
なぜ短期間で達成できたかというのは「1勝99敗」の精神。計画的に早く、たくさん失敗することが大事。誰しも失敗することは嫌だが、でも早く失敗しないと成功しない。
起業するときには、大きなビジネスをやろうとする必要はない。「Small is Beautiful」の発想が重要。このことばは50年も前にイギリスの経済学者が書いた本のタイトル。今でも注目されている本なので、これは真実なのだと思う。大きなビジネスでなくても、それが自分らしければいい。「私の事業だ」と自信を持ってやってほしい。小さなビジネスでも、それが集合体になれば、10億円の規模にもなれる。
一粒1000円ライチは、「やってみよう」の精神で始まった。これが大事。地域ビジネスは打ち上げ花火で終わると言われているが、一粒1000円ライチはもう4期目で、売り上げも拡大している。
日本の農林水産業はピンチだと言われているが、実は一番チャンスがある。投資家の人たちもみんなそう考えている。
東京、ニューヨーク、ロンドンはもう飽和している。でも農林水産業の舞台は地方が中心だ。立ち上げたAGRIST株式会社は、テクノロジーで農業課題を解決するためのベンチャー企業で、ピーマンの自動収穫ロボットを開発している。AGRISTが注目を集めているのは地方でやっているから。今、農家の平均年齢は67歳で担い手はいない。この1万7000人の町で、ピーマン農家の声を聞きながらチャレンジしている。
「一歩踏み出そう」といくら言っても、実は9割の人は行動しない。このことは、みんながやらないからそれだけチャンスがあるということでもある。そして地方はチャンスだらけの「ブルーオーシャン」。特に農林水産業はガラ空きだ。
起業は小さな成功を積み重ねることが大事。とにかく一歩踏み出してほしい。