【INACOMEビジネスコンテスト2024開催レポート】農山漁村の可能性を、あなたのアイデアでビジネスに。

農山漁村における課題解決のアイデアを競う「INACOMEビジネスコンテスト」本選大会が、2025年1月24日、東京・南青山のPASONA SQUAREで開催されました。今年で6回目を迎える本大会には、全国から150件を超える応募があり、一次審査、二次審査を通過した9組が本選の舞台へと進出しました。

INACOMEビジネスコンテストとは?

農山漁村には、多彩な地域資源が豊富に存在し、それらを活かしたビジネスの可能性が広がっています。農林水産省は、この地域資源を活用し、付加価値を生み出すことで農山漁村における所得向上と雇用創出を目指す取組を推進しています。

この取組の一環として開催される「INACOMEビジネスコンテスト」は、農山漁村の課題解決や新たなビジネス創出につながるアイデアを広く募集する場です。今年度からは、ビジネスプランの取組段階に応じて「アイデア部門」と「スタートアップ部門」に分かれ、ピッチコンテストが行われました。

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ビジネスコンテスト本選大会、スタート!

本選では、5名の審査員の他、多くの協賛企業関係者や観覧者を前に、9組の登壇者が発表しました。

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大会の冒頭では、農林水産省農村振興局農村政策部都市農村交流課長の廣川氏が登壇。「農山漁村は持続的な生産や、豊かな生活の場であるとともに、自然環境と調和した循環と共生の場である。農林水産省としても、農山漁村に広がる魅力的な地域資源を活用した、多様なビジネスチャンスを作ることで、農山漁村における所得の向上や雇用機会の確保を図り、地域社会を守ろうとする取組を推進している。本ビジネスコンテストによる、農山漁村の可能性を引き出しながら付加価値を創出するアイデアを通じ、多様な価値観や業種が関わることで、活気ある地域社会を実現したい」と語り、「参加者の皆様にとって新たなネットワーク構築や、次なるチャレンジにつながる機会となることを期待している」と激励の言葉を贈りました。
その後、9組のファイナリストによるピッチと、審査員からの質疑に応える形で本選大会は進行しました。

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登壇者とビジネスプランの概要(発表順)

前半はアイデア部門4組の登壇者がプレゼンテーションを行いました。アイデア部門とは、今後(目途として3年以内)農山漁村の活性化につながる事業の立ち上げを考えている方、新たな分野での事業を考えている方が対象となります。

カプセル茶プロジェクト~日本茶の未来をグローバルに再定義~
葛井陽介(鹿児島堀口製茶有限会社)

お茶の国内需要が年々減少する中、茶業の再活性化を目指し、市場保有率が一定数ある既存のカプセル式マシンを利用した、海外でも手軽にワンプッシュで本格的な日本茶を楽しめるカプセルを開発。海外の趣向にも合わせつつ、お茶の産地「鹿児島」の伝統と先端技術の融合に取り組む。

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放牧豚のフランチャイズ事業~放牧で切り拓く農山漁村の未来
川瀬 悠(悠牧豚株式会社)

耕作放棄地や遊休農地など、地目を選ばない放牧豚の飼育豚は約1年で出荷でき、新ブランド豚の誕生など、新たな収入や雇用を生む。放牧地に人が出入りすることで周辺農地の鳥獣害を軽減できるほか、飼料を規格外野菜にすることで、フードロス削減にも寄与。飼料の作付に新規就農者トライアルを組み合わせるなど、広い視野で循環型農業の実現が可能。

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想いや資源を後世まで残し続けるGood Wood Solutions
木村 優太(国立研究開発法人産業技術総合研究所/株式会社AIST Solutions)

高齢者から子供や孫などに自分の山や希望地域の木で作った商品を希望のタイミングで送り続けられる「モノ」販売サービス。木の内部構造を可視化できる小型X線測定器により、製品に合った程度の良い木を予め選定でき、計画的な森林伐採と、持続的な林業にも寄与。地方自治体と連携し、山の所有者と消費者へアプローチ予定。

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共通言語である天気がコネクトする地域コミュニティ
齋藤典之(合同会社ノーエン)

地域に応じた細やかな天気予報を提供し、フードバリューチェーンに活用するアプリを開発。予報手段の1つであるアンサンブル予報からリスク予測を可能にする。導入先はスーパーや小売店。天気情報から消費者や生産者の行動のほか、農産物の生育状況を把握し、マーケティングや仕入れ、販売戦略に活用。各地域の気象予報士と連携してユーザーをサポート。

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後半はスタートアップ部門5組の登壇者がプレゼンテーションを行いました。スタートアップ部門は、既に事業化が行われている取組(目途として事業開始から5年間以内)または、展開中の事業であり、更なる成長や発展が見込まれる方が対象となります。

ドジョウが日本の原風景と食糧危機を救う!!
嶋崎 成(DJプロジェクト株式会社)

利用されていない水田を活用したドジョウの天然養殖ビジネス。成長までの期間が短く管理が容易。低コスト、高収益で、競合が少ない。契約者への稚魚の供給や育てたドジョウの買取もサポート。栄養面で注目される食材であり、海外を含め今後の販路拡大や、観光面・教育面など幅広い活用が見込まれる。

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格納する農業で、CO₂削減を実現する
須貝 翼(カクノウ株式会社)

空き家(室内)で野菜を栽培することができる「農家具」を開発。空き家の所有者が委託する地域の不動産業者に「農家具」を販売。不動産業者が地域住民に貸し農園として運用。空き家の家主には家賃収入、地域住民には利用しやすい貸し農園となる。農家具には野菜向けにCO₂を収集する装置を搭載し、CO₂削減+地域住民に癒しの場を提供。

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棚田有機ポニックス 里山を蘇らせる持続可能な農業の創造
遠崎 英史(株式会社プラントフォーム)

棚田の地形を活用し、上段でチョウザメの陸上養殖を行い、中段で飼育水を微生物の力で有機肥料に変換、下段で野菜を生産する、複合的農業システム「棚田有機ポニックス」を考案。魚種をコチョウザメとすることによる短期間育成(約5年)と、自社技術による選別(メス)出荷が可能なため、早期に投資回収可能。野菜の生産に新規就農を呼び込み、雇用創出、地域活性化、関係人口増加にも貢献。

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風待ち潮待ちの港町の再生
藤井 肇(株式会社アルファフェニックス)

プレジャーボート利用者が、手軽に係留場所を予約できるアプリを開発。地図ベースのWebプラットフォーム「ankaa map」を活用し、天候やニーズに合った場所を選べる。未利用の桟橋や漁港を海からの玄関口とし、宿泊施設やレストランと融合した一体型リゾートとすることで、新たな人の流れを生み、地域全体の収益化を目指す。

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野菜採り放題で農家の労働時間を半分にする収穫サブスクサービス
松本 直之(株式会社ノーティスト)

農家は畑で野菜を生産し、利用者は契約した畑に野菜を自由に取りに行く収穫サブスクサービス「畑ビュッフェ」。利用者は月額定額制で新鮮な野菜が365日取り放題になり、子どもたちは収穫体験ができる上、野菜の市場価格に左右されないため家計にも優しい。全国の農家にプラットフォームを提供し、運用もサポート。

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※登壇者氏名(敬称略)

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INACOMEビジネスコンテスト表彰者が決定!

9組の発表が終わり、審査を経て下記の通り各賞が発表されました。

・最優秀賞

嶋崎 成さん(DJプロジェクト株式会社)/ドジョウが日本の原風景と食糧危機を救う!!【スタートアップ部門】

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・優秀賞

葛井 陽介さん(鹿児島堀口製茶有限会社)/カプセル茶プロジェクト~日本茶の未来をグローバルに再定義~【アイデア部門】
須貝 翼さん(カクノウ株式会社)/格納する農業で、CO₂削減を実現する【スタートアップ部門】

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・審査員特別賞

木村 優太さん(国立研究開発法人 産業技術総合研究所/株式会社AIST Solutions)/想いや資源を後世まで残し続けるGood Wood Solutions【アイデア部門】
遠崎 英史さん(株式会社プラントフォーム)/棚田有機ポニックス里山を蘇らせる持続可能な農業の創造【スタートアップ部門】
藤井 肇さん(株式会社アルファフェニックス)/風待ち潮待ちの港町の再生【スタートアップ部門】

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・奨励賞

川瀬 悠さん(悠牧豚株式会社)/放牧豚のフランチャイズ事業~放牧で切り拓く農山漁村の未来【アイデア部門】
斎藤 典之さん(合同会社ノーエン)/共通言語である天気がコネクトする地域コミュニティ【アイデア部門】
松本 直之さん(株式会社ノーティスト)/野菜採り放題で農家の労働時間を半分にする収穫サブスクサービス【スタートアップ部門】

・INACOMEサポーター(協賛企業)賞
―NTTアグリテクノロジー賞

葛井 陽介さん(鹿児島堀口製茶有限会社)/カプセル茶プロジェクト~日本茶の未来をグローバルに再定義~【アイデア部門】
遠崎 英史さん(株式会社プラントフォーム)/棚田有機ポニックス里山を蘇らせる持続可能な農業の創造【スタートアップ部門】

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当日は熱意あるピッチが繰り広げられ、それぞれのアイデアを競い合う熱気あふれる場となりました。その中でも、見事最優秀賞を受賞したのは、嶋崎成さん(DJプロジェクト株式会社)。提案内容は、栄養価が高く日本の伝統食材である「ドジョウ」の可能性を再発見し、現代の食文化に再び根付かせるという革新的なものでした。
嶋崎さんは、受賞スピーチで「ドジョウが日本の食文化から遠ざかってきている今こそ、多くの人にドジョウを食べてもらい、元気になってほしい」と熱く語り、日本の食文化を未来へとつなげる強い決意が伝わってきました。

審査員の大野泰敬さん(株式会社スペックホルダー 代表取締役社長)は、選定理由として「社会課題を解決するアイデアの中でも、日本の未来にとって重要な施策と感じました。課題はあるものの、数年後にはビジネスとして広く展開できるように成長してほしい」と期待を寄せました。
また、進藤かおりさん(株式会社パソナグループ)は、「ドジョウにはこれからの食料問題を解決する可能性がある」と評価し、持続可能な食文化への貢献に期待を込めました。

審査委員長の大野泰敬さんは総評として、「どのアイデアも素晴らしく、今回の結果はあくまで本日時点での判断にすぎません。次の機会では違う結果になるかもしれないほど、皆さんのアイデアには大きな可能性が秘められています」と講評。
さらに、「ビジネスを進める上で大事なのは、諦めないこと、挑戦し続けること。会場には農林水産省の関係者やサポーター企業の方々も多くいらっしゃいますので、ぜひ今日の出会いを次につなげてほしい」と、登壇者たちにエールを送りました。

INACOMEビジネスコンテストは、単なる競争の場ではなく、新しい未来を創造するための出発点です。今回の受賞者のみならず、参加者全員のアイデアが今後どのように発展していくのか、ますます目が離せません!

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