東北初のライスレジン製造工場
バイオマスレジンホールディングスは日本のバイオマス関連業界の先駆けで2005 年に事業を開始。代表的な製品はお米を原料にしたバイオマスプラスチック“ライスレジン”で、従来のプラスチックに変わる環境にやさしい新素材として、スーパーやコンビニのレジ袋、ホテルのアメニティ、おもちゃ等、身近なシーンで年々活用が広がっている。
1997 年の京都議定書をきっかけに、世界中で環境への配慮が社会課題となり、微生物によって自然に還る“生分解性プラスチック”や、“木質バイオマス”の開発が進む中、国内で安定的、定量的に穫れる穀物を原料にできないかと考え、辿り着いたのがお米だった。最初は委託製造でスタートし、安定生産や研究開発力の向上、スピード感を求め、2017 年に日本を代表する米どころ、新潟県南魚沼で第一号の自社工場を立ち上げた。
バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの製造、耕作放置地や休耕田を使った米づくり、研究開発、コンサルティングの4 つのミッションを掲げる中で、2021 年に福島県双葉郡浪江町に株式会社バイオマスレジン福島を設立。“非食用米”を原料にライスレジンの製造が開始した。バイオマスレジンホールディングス初期段階から中核メンバーの中谷内美昭さんは、取締役副社長を経て、現在は農地所有適格法人株式会社ちーのの代表取締役を務める。
浪江町との出会いと決意
同社のある浪江町は東日本大震災の東京電力福島第一原子力発電所事故により立ち入り禁止区域となり、一度は住民がいなくなった地域だ。初めて中谷内さんがこの場所を訪れた時は震災から約10 年を経過していたが、時が止まったかのようだった。戻ってきた人たちはわずかで、稲作の盛んだった土地は約8 割が休耕地と化し、風評被害で食用米の生産は難しい状況が続いている。あまりの衝撃に今でも強く記憶に残っている。