本名「柿木」から放置柿に着目。地域の困りごと解決と収益化へのチャレンジ

今年の冬は熊被害がニュースを賑わせた。その一因として民家の放置柿も注目を集めたが、東北地方など柿の木が多い地域では、柿を食べに里山に降りてくる熊だけでなく、柿の臭い、柿を食べにやってくる鳥の糞害、落下した柿による屋根の腐食など、地域の困りごととして知られている。

スノーボーダーとして日本を旅する生活を続け、結婚を機に秋田県能代市に移り住んだ柿木崇誌さんは、名字が「柿木」だったことなどから、柿の木が多くの民家にあること、実った柿がそのまま放置されていることが素朴な疑問として頭の片隅にあり続け、、秋田県による若者の新たなビジネスプランを応援するプロジェクト「若者チャレンジ応援事業」の存在を知ったとき、放置柿を収穫し、ドライフルーツを製造・販売するという構想で応募した。その審査結果を待たずして2021 年に事業はスタート。現在も試行錯誤をしながら収益化へ向けて奮闘している。

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地域のこまりごと「放置柿」を収穫して加工

「放置柿は大きな問題ですし、放置をされていない方であっても、造園会社に剪定と廃棄をお願いしている方が多くいらっしゃいました。ドライフルーツを販売している友人から柿を加工すれば美味しいものができることを教えてもらい、それならばまずはやってみようと動き始めてみたんです」

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収益はあげづらいと想像していたそうだが、走り出してみると予想を上回る効率の悪さ。地域の困りごとを無料で解決してくれるということで営業せずとも収穫依頼は舞い込んでくるが、柿木さんの生計を支えるキッチンカーでの柿ソースを使ったお好み焼き販売を、収穫の10 月半ばから12 月上旬までは休止して作業にあたるため、経費ばかりが出ていくという状況に陥った。収穫地までの移動費用はガソリン代の高騰でかさみ、背の高い柿の木での収穫では危険性も伴い時間も必要。収穫した柿の皮剥きも手間がかかり、乾燥機にかけるのも電気代と電圧の問題で限りが出てくる。コストを回収するために売価は上げざるを得ず、しかし供給量の限界がすぐに来るという悪循環に陥ったのだ。

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