かつて日本で最も小さい競馬場「益田競馬場」があった島根県益田市。厩舎などを有したことから昭和57 年島根県国体が開催されたとき、益田市は馬術の会場となり、その跡地は「益田市馬事公苑」として乗馬クラブやホースセラピーの場として活用されてきた。しかし、益田競馬場は平成14 年に廃止となり、益田市馬事公苑も利用者の減少から維持を検討されることに。そのときに社会医療法人・松が丘病院は運営に手を挙げ、障害者のためのA 型就労支援事業所として道を歩みはじめる。馬事公苑は「さんさん牧場」という名称となり、引退した競走馬などと触れ合える観光牧場へ。牧場は年々集客数を伸ばし、馬糞を肥料に使う野菜栽培と加工品販売も好調。大きな成果を挙げている。
福祉・医療×観光牧場化を目指したい
さんさん牧場の立ち上げから施設長として陣頭指揮を執る大賀満成さんは、益田競馬場で厩務員だった過去を持ち、農業の手伝いを経て看護補助者として松が丘病院に勤務。その傍ら益田市市会議員の活動も行ってきたというユニークな経歴を持つ。益田市の発展、牧場のA 型就労支援事業所としての機能、牧場の経営判断など、さまざまな視点を持って取り組む必要があったであろうことは容易に想像が付く。「よく皆様から聞くのは、『益田には何もないよね』という言葉。それならば、引退馬の活躍の場を作るという動物愛護の観点、地域に奉仕するという理念、そこに福祉や医療が上手く関わることができる場として、病院が運営することはとても珍しい観光牧場化を目指しました」。