農山漁村の仕事を次世代へ引き継ぐ「事業承継版・空き家バンク」とは:INACOME起業者インタビュー




農林水産省では、農山漁村の活性化に向けて、地域の起業者や関係者同士がつながることのできるwebプラットフォーム「INACOME」(イナカム)を開設しています。

MAFFアプリでは、ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。

今回は、令和2年度INACOMEビジネスコンテストにおいて、「継ぎたい日本がみつかる「ニホン継業バンク」」と題してプレゼンした、ココホレジャパン株式会社 代表取締役の浅井克俊さんにお話を伺いました。


■中小企業・個人経営者のための「事業承継版・空き家バンク」

-「ニホン継業バンク」という事業を展開する背景には、どのような問題意識がありますか。

2025年までに、中小企業経営者の約6割が70代を迎えると言われており、さらにその経営者の約半数が後継者未定と言われています。
ざっくり言うと、中小企業の約3割が、後継者が見つからずに廃業してしまう可能性があります。

他方、政府の世論調査によると、都市住民の約3割が農山漁村地域への定住願望があるという報告もあり、移住希望者が3割いるのに地方の仕事の3割が失われようとしているという現状の課題を解決し、地方創生を実現したいという思いが、問題意識の根底としてあります。

また、事業承継はM&Aのようなビジネスモデルになりがちですが、その場合、高額な仲介手数料がとれる案件を優先する経済合理性が働きます。
そうすると、中小企業や個人経営者は仲介手数料が少額となり、事業承継の機会すら与えられないという課題があります。

-とても深刻な課題ですが、「ニホン継業バンク」では、このような課題をどのように解決していくのでしょうか。

私達は、上記課題を解決するため、「事業承継版・空き家バンク」をコンセプトとした、第三者による事業承継プラットフォームを運営しています。
具体的には、市町村や商工会などに年間利用料を払っていただき、その地域の中小企業や個人事業主の皆様が事業承継を実現できるよう、地域専用の事業承継プラットフォームを開設します。
また、事業を継いで欲しいという方に取材して、移住や事業承継に関心がある方向けに記事を配信しているほか、承継希望者とのマッチングサポートや記事のアクセス数などに関するレポート配信などを行っています。


■地域と連携した継業支援を目指す

-市町村や商工会などを通じて事業を展開することで、どのようなメリットがありますか。

前述したとおり、多くの中小企業は事業規模の関係で高額な手数料は見込めません。
よって、手数料ビジネスとしないためにも、市町村などに利用料を払ってもらう形式にしました。
また、特に地方の高齢者は情報収集手段が限られており、自らウェブプラットフォームに登録するのはハードルが高いです。
そうした場合、市町村や商工会などが間に入ってサポートしていただける体制の構築が重要です。
さらに、市町村や商工会などには地元の情報が多く集まることから、事業を継いでほしいという希望者の掘り起こしにもつながります。

経営者へ事業承継を提案する際、経営者は自分の仕事を継ぎたい人などいないとあきらめているケースも多いです。
そうした場合に、市町村や商工会などから、農業など地域に根ざした仕事を継ぎたい人がいることや、事業承継をサポートする仕組みがあることを説明していただき、経営者が前向きに考え直してくれることを期待しています。
この事業を進めるには、地域の協力も不可欠だと考えています。

-農林水産分野では、どのような事業承継事例がありますか。また、農業分野の事業承継について留意点などはありますか。

合鴨農法や椎茸の栽培、川魚の遊漁施設経営などの事例があり、実際に事業承継を実現したものもあります。

農業の場合、潜在的な継業需要は非常に多いものの、担い手確保や新規就農というイメージで考えている方が多く、そこがギャップになっている印象があります。
農業未経験者がいきなり農業をするのは難しいため、耕作している農地を継いで、農業を教わりながら経験を積んでいく、という両者のコミュニケーションを前提とした仕組みができると、農業にも継業という選択肢がもっと広がるのではないかと思います。


■継業のポイントはお互いへの「尊敬」

-浅井さんの中で、特に印象に残っている継業事例はありますか。

岡山県美作市で、地域おこし協力隊の制度を活用して川魚の遊漁施設を継業する事例があったのですが、以前募集したところ希望者が全く集まらなかったそうです。
「ニホン継業バンク」で再度募集したところ、6人から応募があり、実際に現地を見て説明を受けることになったのですが、施設の経営者は「自分たちの仕事を継ぎたい人がいる」という事実に大変喜んでいました。
また、事業を継ぎたいと応募した方々も、自分たちがこのような事業を継ぐチャンスがあることに感激していました。
遊漁施設というのは一度廃業すると復活させることが難しく、このタイミングで継業できたことは大変価値のあることだと思います。

-今までの継業事例から、事業承継が上手くいく条件などはありますか。

継ぐ側も継いでもらう側も、お互いへの尊敬の念があることが重要だと思います。
石川県七尾市の椎茸農家の事例では、継いで欲しい側が一度断ったのですが、この事業に応募した方は、「この人の元で事業を継ぎたい」と再度訪問して継業を志願しました。
その熱意に感銘を受けて事業承継を決断し、現在では良好な師弟関係を築いています。
継いで欲しい側は、ご自身が今まで培ってきた技術やこだわりを持っており、そうしたものも含めて事業を継ぐという、経済合理性では推し量れない価値をどれだけ尊重できるかが重要だと思います。


■引き算の要領でビジネスモデルを考える

-「ニホン継業バンク」を開設するまでには、どのような経緯がありましたか。

元々は企業に勤めていたのですが、東日本大震災を機に自分の価値観が大きく揺らぎ、以前から仕事で関わっていたソーシャルビジネスを自分で立ち上げたいと思い起業しました。
起業当初は広告業や雑誌の編集等が中心でしたが、事業承継の特集を担当し、事業承継が全国的な課題であることを知りました。
また、自分でも事業譲渡する機会があったのですが、後継者が見つからず苦労した経験があり、全国的な課題である事業承継問題を解決したいと思ったことをきっかけに、「ニホン継業バンク」を立ち上げました。

-現在のビジネスモデルをどのように構築しましたか。

ビジネスモデル構築に際し、多くの先輩起業者やベンチャーキャピタルなどに相談しました。
当初はM&Aビジネスに近い事業を想定していたのですが、「多額の仲介手数料がとれなければビジネスとして成立しない」と厳しい指摘を何度も受けました。
1年半くらい試行錯誤を続けていましたが、周囲の指摘を分析していくうちに、「小規模事業者を対象とするなら手数料収入は見込めないことから、事業としてどうマネタイズするか」を考えるようになりました。
そして、本当に必要な要素は何かという引き算の要領で考えた結果、自分がしたいことは、事業がなくなって困る町に対して、町を維持することを支援する事業ではないか、と考えるようになりました。
このことがきっかけで、市町村や商工会などから、手数料や広告費なども全て含めた利用料をいただいて事業を展開するという、事業承継版・空き家バンクの構想が生まれました。


■地域の多様性を残し、地域の幸せを実現する

―新型コロナウイルスによるビジネスへの影響をどう捉えていますか。

事業を始めたときから影響を受けていたため単純な比較はできませんが、市町村などがコロナへの対応でさらに忙しくなり、事業承継への対応が後回しになってしまっていることや、事業を継いで欲しいという企業を直接訪問することが難しくなったことなどが影響としてあります。
他方、コロナ禍で廃業を検討している人も多くいらっしゃることが予想されます。
そうした方々は、誰にも相談できずに突然廃業してしまうことも多いです。

このような事態を防ぐためには、地元自治体と連携して対応に当たる必要がありますが、事業を継いで欲しいという需要が増えているにもかかわらずアプローチできていないことにジレンマを感じています。


-最後に、ビジネスを通じて達成したいミッションは何ですか。

地域の多様性を残すことで地域の幸せを求めていきたいと考えています。
地域ならではのお店や農産物などが残っていることがその地域らしさだと思っており、そのためには地域に小さな仕事がたくさん残っていることが重要です。
そうした状態がWell-beingにもつながると思っています。



いかがだったでしょうか。INACOMEでは、浅井さんのように、地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々を結びつけるプラットフォームを運用しております。
ご関心のある方は是非アクセスして下さい!




<リンク先>
ココホレジャパン株式会社Webサイト(外部Web)
事業承継プラットフォーム「ニホン継業バンク」(外部Web)
令和2年度INACOMEビジネスコンテスト 本選大会動画(外部Web)

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