地域で活躍する多様な起業家を特集するこの企画。「地方の特徴が出るのは食。その中でもパン。」と笑顔で語るのは群馬県を拠点に、東京のオフィスワーカー向けにパン宅配サービスを行なっているパンフォーユーの代表、矢野健太さん。大学卒業後は広告代理店に勤め、教育系のNPOに転職し、現在の起業に至っています。今回のインタビューでは、なぜIT・観光業・農業などの数ある分野の中からパンを選択し、これから拡大してく上でどのような未来をつくろうとしているかを伺いました。
群馬県を中心とした地域のパン屋さんを都内のオフィスワーカー向けに販売。
ーまずはじめに経営されている会社についてご説明いただけますでしょうか。
矢野)矢野健太です。群馬県でパンフォーユーという会社を経営しています。会社でパンを作っているのではなく、当社と提携した地域のパンをオフィスワーカー向けにお届けしています。提携しているパン屋は、群馬県を中心にしながら、栃木県や神奈川県のパン屋とも提携しています。
ーパンを自社で作るのではなく、提携されたパン屋のものをオフィス向けにお届けされてるんですね。
そうです。元々はパンの宅配サービスを個人向けにやっていました、ですが、個人向けでありながら、自分の会社用にパンを買われている方が想像以上に多かったこと、オーダーメイドという形でお客さんが食べたいパンをカスタマイズしてオーダーをもらうことが多くありました。そこから1つのパン屋さんだけでなく、複数のパン屋さんを束ねて、オフィスにお届けする今の形ができてきました。パンをお届けしている会社は都内が8割ですが、地方の企業さんにも契約いただいていて、全国の企業さんからニーズがあることを感じていますね。
今は、大きく2つのプランになりました。1つ目は、冷凍庫を貸し出して、商品の補充だったり在庫管理を弊社がするプラン。2つ目は、商品のみをお送りさせていただく自由な形で召し上がってもらうプランです。
地方の特徴が出るのは食。その中でも特にパンに注目した。

実際にお届けしているパン。数種類あるので、お客さんは毎回楽しみにされているとのこと。
ー地方創生といっても、教育やものづくり、宿泊業など様々な選択肢があると思いますが、なぜパンを選択されたのでしょうか。
もともと地方創生的はやりたくて、せっかく挑戦するからには地方で戦える産業を作りたいと思っていました。様々な分野の中で、食こそ地方ならではのことができるなと思ったんです。製造業とも相性がいいですしね。その地域の気候の特徴が強く出る食べ物は何かと考えた結果、パンにたどりつきました。パンは小麦や水によっても味は変わる。日本と海外は水の差があってパンの質もかなり変わってくるんです。地域の独自性を生かす上でもパンは戦えると思いましたね。
ーそれまではパンとどのような関わりがあったのでしょうか。
東京で会社員をしていた時は、パンが好きでコンビニで買ってよく食べていました。でもコンビニのパンは添加物も入っていることに嫌悪感を覚えました。カラダにはよくないですしね。でもある時食べた冷凍パンは添加物がほぼ入っておらず、味も非常においしかった。その時にパンってこんなにおいしいのかと衝撃を受けました。町のはずれにあるパン屋さんがすごくおいしいというのがわかりました。事業構造を見ると、家賃や労務費が大きくなりますし、水もパンを作る上では大切になってくる。そういった観点からパンに非常に可能性を感じ、今のビジネスに繋がっています。
外れた自分の仮説。人間的に面白い・教養がある人は地方より都会の方が多かった

ー矢野さんは大学進学から東京に出てUターンという形で戻られましたが、地方創生に携わりたいと思った根本はなんだったのでしょうか。
大学に進学した際に、地方出身の面白い人にたくさん出会えるんだろうなと期待していました。でも大学生の中でも、人間的に面白いとか教養がある人は都会出身の人が多いかったんです。僕は、地方で育ち、大学で都会に出てきた人の方が面白いのではないかという仮説をもっていましたが、外れました。新卒で広告代理店に入ると、さらにその傾向が強いんです。地方で頑張ってきた人の方が優秀だと思ってたのに、親御さん達が引いてきたレールを乗ってきた都会の人の方が多い。そこに悔しさを感じ始めました。地方創生に携わりたいと思った根源はその悔しさですね。生き生きとしてる人を地方でも増やすことが大事だと思って、教育ベンチャーとかNPOの中でいる頑張って仕事をしてる大人がどれだけ周りに多いか。東京の高校生に将来の夢を聞いた時と、自分の群馬の母校で聞いた時の回答の違いにはびっくりしましたね。
ー高校生からすでに違いが出てるんですね。具体的には、東京と群馬でどのような回答の違いがあったのでしょうか。
東京の高校生に将来の夢を聞くと多岐に渡った回答をもらいます。「官僚になりたい。」や「どこどこの会社に入りたい。」、中には「起業したい。」という人までいます。でも、地元の母校に聞くと「お医者さんになりたい。」や「弁護士になりたい。」といった回答が続出して多様性がないんです。聞いたことはないですが、知っている企業の数も東京の高校生の方がはるかに多いのではないかと思います。都会はベンチマークになる大人が多いですし、情報が入ってきやすい。この地方と都会の差を埋めないといけないですし、自分が活動していくことで埋めていきたいと思っています。
地方で起業するアイデアはウェブには落ちてない。地元の人と話すことが大切。

提携しているベーグル屋さん。非常に可愛らしい外観
―地方のパン屋さんのパンを冷凍保存して都内のオフィスワーカー向けに売るというビジネスアイデアはユニークだと思うのですが、今後地方で起業したい人はどう起業アイデアを見つけるのが良いでしょうか。
まずは、地元の人と話すことですね。地方にはウェブに落ちてない、閉鎖的な情報が非常に多いので、直接話を聞くのが一番いいと思います。商工会議所、市役所、経済産業課といった組織の人と繋がった方がいいですね。あとは、地元の企業にどういったものがあるかどうかを徹底的に調べること。自分で何も0の状態から始めるのもいいと思いますが、いいものを作ってるけど売り方がわからない。後継者がいない。そういった方々とどう一緒にやっていくか考えても起業のアイデアに繋がっていくと思います。
ー今の矢野さんが地方で起業するなかで、面白いなと思う点はどこにありますか?
雇用を増やして、どんどんパートさんが増えて規模を拡大していくところですかね。群馬県桐生でサラリーマンをするなら味わえないスピード感・スケール感で、地元に貢献できてるんじゃないかなと思います。
国内から世界へ。海外の方にも日本の地方発のパンを届けたい。

ー最後に矢野さんの今後の目標やビジョンを教えていただけますでしょうか。
もっともっとたくさんのパン屋さんと提携して、地域のパンを食べたい人に積極的にアプローチしていきたいですね。今提携しているパン屋さんは12店舗ですが、将来的には1000〜2000店舗までいったら事業としても面白くなるんじゃないかなと思います。国内で顧客を開拓した後は、海外の方にも日本の地方発のパンを届けられるようにしたいですね。最近だとインドで日本のパン屋さんが人気だという話もあったので可能性は秘めていると思ってます。あとは、パン屋さんの働き方の改善をしていきたいです。
ー働き方改革ですね!具体的に矢野さんは今後どのようにパン屋さんの働き方を改善していきたいのでしょうか。
店頭販売や近所の学校などにおろしているパン屋さんは、4時・5時には起きなくてはいけないんです。でも冷凍パンであれば、早起きする必要はなくなります。また店舗で販売するのではなく、通販やネットで販売できるようになれば場所が制限されなくなります。そうすることで、業務日を1日減らすこともできますし、ゆっくり寝て休むこともできます。自分たちの事業をきっかけにUターン・Iターンしてくれるパン屋さんが増えてくれれば嬉しいです!
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