INACOME NIGHT 第1弾

INACOME NIGHT初回のゲストは、TURNSプロデューサーの堀口正裕氏。地域の最新事情を長年にわたって追い続けてきた氏に、地域活性化や起業のヒントになる様々な事例とその読み解き方を中心にお話しいただきました。

日 時:2020年10月27日(火)19時~21時
テーマ:地域活性化について
ゲスト:TURNSプロデューサー/株式会社第一プログレス常務取締役 堀口正裕 氏

(プロフィール)
TOKYO FM「SkyrocketCompany スカロケ移住推進部」 「デュアルでルルル♪」ゲストコメンテーター。国土交通省、農林水産省等での地方創生に関連する各委員を務める他、地域活性事例に関する講演、テレビ・ラジオ出演多数、全国各自治体の移住施策に関わる。東日本大震災後、豊かな生き方の選択肢を多くの若者に知って欲しいとの思いから、2012年6月「TURNS」を企画、創刊。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす、関わり続ける為のヒントを発信している。

【ウェビナー要旨】

移住や地域とつながりをもつのは「幸せになるため」
私は地方創生ということが言われるずいぶん前から、20年以上にわたって地域とつながり、地域に寄り添うメディアをつくってきた。2011年に東日本大震災が起こり「メディアをつくる立場の者として、この国のために、これからの日本を担う人たちのために何ができるだろう?」と考えて誕生したのが「TURNS」。
「TURNS」は、新たな人生のフィールドとして地方を選択し、豊かな人生を手にいれた人々を紹介しているメディアだと紹介すると、「地方は甘くない。キラキラしてる人ばっかり紹介して!」という批判も受ける。しかしキラキラキラしていることと、地方であることとは何の関係もない。
雑誌で取り上げてきた人たちは笑顔で掲載されているが、試行錯誤や大小の失敗を繰り返して今がある。そもそも何のために移住するのかというと自分自身が「幸せになるため」で、それ以外の何物でもない。
こういう話をするのは、これまでミスマッチの現場をたくさん見てきたから。地方についての理解不足や誤解がある。メディアの報道の仕方にも原因はあるが、今、うわべのユートピア的なところだけを見て地域と関わろうという人が少なくからずいて少し危惧している。
私はいつも「人生の答えは地方にありません」「地方はよそ者の実験台ではない」と話しているが、ユートピアなどどこにもなく、自分でつくっていくことを楽しむのが大事だと思う。

“選ばれる地域”になることが重要
今は「完全移住しなくても地域に貢献できる選択肢がある」ということがわかって動き出す人がどんどん増えてきている。
取材を通して実感するのは、現在は自分らしい価値観、暮らし方、生き方を手に入れやすい時代だということ。東日本大震災後は、会社を辞めてでも地域に移り住んで地域に貢献したいという人が増え、「脱東京、VS東京」といったコンセプトが分かりやすかった。withコロナの現在は、「今のキャリアを捨てずに、会社組織に属したまま、好きな場所・地域で、好きな仲間とパラレルワーク(複業)を堪能したい」というニーズが出てきている。
オンラインで色々なことができるようになっているので、脱東京、脱都市ではなく、都市と地方の、自分なりの関係性を構築していける。
地域に入っていった人たちに感じる共通のポイントは「どう生きたいか?」「夢(ワクワク感)」「地域への敬い」「信頼できる人との繋がり」「安心できる居場所(コミュニティ)」の5つに集約できる。
昨今「Well-Being」ということがいわれているが、個人だけでなく、法人も地方との接点を積極的に持ち始めていて、社員が快適に働ける環境を作ろうとしている。だからこれからは自治体など受け入れる側も、個人に加えて法人に対して今まで以上に積極的に営業をしかけていくことも必要だ。
人口減少社会では「選ばれる」ことがとても重要になる。コロナ禍は地域にとってチャンスだといわれているが、都市のニーズに応えるためには受け入れる側の準備が必要で、地域間で相当格差が開くと思う。この先は、Well-Being、パラレルワーク、リモートワーク、ワーケーション、二拠点居住、多拠点居住などのキーワードを意識して情報発信する地域や企業が選ばれていく。

事例紹介(抜粋)
「何(なん)にもしない合宿」(静岡県裾野市東区 おやじの会)
大人たちが月に一回、“なんにもしない”合宿。寝袋持参で夕食、お風呂を済ませた子どもたちが体育館などに集合し、大人も子どもも、学校も学年も年齢も関係なく、思い思いに遊んで夜9時に寝る。大人たちはそれを見守るだけ。毎回約100名が参加。8年間続いている。
サポート役は地域のおじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさん、高校生、中学生。この合宿を続けることで、親や教師以外に、子どもたちが“普段からお付き合いできる大人”との関係性が生まれる。2020年には、8年前に小学生だった子供たちが、人集めに困っていた消防団に入るなど地域に変化が起きている。合宿をサポートしていた先輩団員との交流がきっかけだという。
今はSNSがあり“カッコいい横の繋がり”は誰でも持てるようになっている。でも同時に大事なのは地域内での縦のつながりも作ることではないか。

「純米大吟醸むかつく」(山口県長門市)
地域資源を使ってビジネスを始めた事例。向津具(ムカツク)半島という面白い地名に着目し、地元が誇る棚田でつくったお米で酒造りを始めた。
地域おこし協力隊で、長門市にJターンした人が「純米大吟醸むかつく」をプロデュース。休眠していた酒蔵を34年ぶりに復活させた隣町の友人と連携し、米づくりやラベルまた、日本酒造りの際に発生する酒粕を使い、鳥居で有名な元乃隅稲荷神社とジョイントした甘酒や、竜宮の潮吹きという観光資源と掛け合わせたスパーリングもつくるなど、日本酒を起点に多彩な商品を展開。
メディアへの情報発信も積極的で、さまざまなメディアが取り上げ話題化に成功している好事例。