【INACOME起業者紹介】誰かにとって特別な地域を創出する(株式会社おてつたび・永岡里菜さん)

INACOME

農山漁村の活性化に向けて、地域起業者の交流を促すプラットフォームを運用するINACOME(イナカム)。各地域で似たような社会課題はあるが、起業者が持つ問題意識やミッションは千差万別です。ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。今回は、季節的・短期的な人手不足で困っている地域の方と「色々な地域へ行きたい・経験をしたい」と思う若者を繋げるサービスを展開する『おてつたび』の代表取締役CEO・永岡里菜さんにお話を伺いました。

誰かにとって特別な地域を創る

-事業を始めたきっかけは?

前職では日本食関係のプロジェクトに関わっていて、様々な地域に行き、住民の方々と一緒に作業をする機会が多くありました。その時に、地域の方々と同じ時間を共有することで、その土地に対する印象が「何もない地域」から「特別な地域」に大きく変わったことに気づいたことが、事業を始めようと思ったきっかけです。東京で聞けば「何処だ、そこ?」となるような地域であっても、行ってみれば素敵なものが沢山あり、知るきっかけがないだけで機会損失が多いと感じています。 そこを解決するためには、地域に来てもらうフローを創る必要があると考えて、旅をしながらお手伝いをすることで「地域を知る」きっかけをつくっています。

-事業のミッションは?

私たちは、「誰かにとっての特別な地域を創出する」をミッションに掲げています。つい誰かに話したくなるような地域、誰かを連れていきたくなるような地域、そんな「特別な地域」を多く生み出して、日本各地に人と想いが巡るような世界を創りたいと考えています。

就農関心層の第一歩として活用

-受け入れ先の農業者からの反応は?

一次産業は農繁期などに短期的な労働力が必要となります。これまでは地域内で人材を確保できていたのですが、最近は高齢化などにより人材確保が難しいとの声をよく聞きます。その短期的に人が欲しいというニーズに応えており、去年利用された方が今年も利用されるケースが増えている点からも満足度は高いと思っています。また、地域に行く人は一次産業に興味のある方が多く、地域の方々も良い刺激を受けていると聞きます。

-これまでで一番印象的な言葉は?

農業に関心があったけど別の進路を選んだ大学生が、青森県のゴボウの収穫作業に参加した後に、「僕は将来の選択肢として農業に興味があると改めて実感した。もし就農するのであれば○○さんのところで修業したい」と言ってくれた時は涙がでるくらい嬉しかったです。一次産業に興味・関心のある人が増えているという実感はあるのですが、どう一歩踏み出せばいいか分からない、どう関わればいいか分からない、で戸惑っているのが現状です。そこを、おてつたびがステップアップできる機会をつくっていきたいと考えています。

ウチは体験を売っていない

-農林水産業者に期待していることは?

ありのままの大変さを教えてほしいと思います。敢えて「お手伝い」という言葉を使っていますが、おてつたびの利用者には「ウチは体験を売っていない」ことを十分理解してもらった上で参加してもらっています。体験は美しい所・楽しい所を切り取って見せてもらうことが多いですが、おてつたびでは地域に入る人はお金をもらう立場にあるので大変なところも任せてもらうようにしています。また、地域の方と同じ目線で汗水たらしながら頑張るからこそ本当の仲間になれると思っているので、遠慮せずにお願いするところはお願いし、一次産業の楽しいことも大変なことも知る機会になればいいと思っています。

一次産業と観光業の人材をマッチング

-新型コロナによる影響は?

都会の若者が地方に移動することを前提としたビジネスモデルなので、新型コロナウイルス感染症による影響は大きいです。一方で、地方の方々とはオンラインで気軽に連絡を取ることが増えたので、都会と地方の距離は縮まっていると感じています。一次産業の方々にお話を聞くと、短期的な人材不足を解決するためのサービスとして活用いただいている方が多いので、外国人技能実習生が来日できなくなって更に人手が足りないというご意見はよくお聞きします。また、感染症に対して敏感になる農業者もいて、地域外の方に人手の依頼をすることを躊躇されているご意見も聞きます。

-そんな状況下で対応していることは?

おてつたびでは一次産業の他に観光業の方々にも若者の受け入れ先として利用いただいています。一次産業では人手不足が深刻化する一方で、観光業では顧客の急減や休業により人材が普段よりも余っています。一次産業と観光業の両方に接点を持つ「おてつたび」だからこそ出来ることを考え、新たに地域内の一次産業と観光業の人材をマッチングする「おてつたび+」を展開しました。

イナカムでは全国の尖った人と出会える

-イナカムのビジコンの感想は?

全国で尖った取り組みを進める人材と出会えたことは良い刺激になりました。全国各地に様々なプレイヤーがいますがこの、一つのテーマを設定して集めることは誰でもできることではないので、そういった観点から価値のある場所だと思います。

-今後はどんな展開を期待するか?

行政とベンチャー企業で立場は異なりますが、目指す方向は同じであることは多いと思います。小回りが利くベンチャー企業だからこそ行政に提供できる価値や情報があると思いますし、自身の取組を行政がどう評価されるのはベンチャー企業としても関心が高いので、定期的な意見交換など行政とベンチャー企業がもっと密な関係を構築できることを期待します。農山漁村の活性化に向けて、地域資源を活用した起業者を支援するイナカム。プラットフォームでは、永岡さんのように地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々と結びつくことが可能ですので、是非ご活用ください!