【青森県で起業!】新しい働き方「テレワーク」で兼業起業家を目指す!

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地域で活躍する多様な起業家を特集するこの企画。「テレワーク」この言葉に馴染みのない方もいるかもしれません。テレワークとは、時間や場所の制約を受けずに働くスタイルのことをさします。今回は、青森県三戸町に移住し、株式会社コー・ワークスに在籍しながら、テレワークを実践している五十嵐淳さんのインタビュー。

外部視点だからこそ気づいた町の魅力を掘り起こし、クラウドファンディングを通じて地元農家と新たな商品開発をしたり、地域資源を世界に輸出したりと三戸町を盛り上げる五十嵐さん。地域の方との連携もうまくいき、地域にとって新しい活動も精力的に取り組めている、その理由を探ってきました。

子供の誕生と3.11後から東北の景色が今までよりもはるかに魅力的に感じ始めた

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ー最初に自己紹介していただいてもよろしいでしょうか。

五十嵐)五十嵐淳です。よろしくお願いします。今は仙台に拠点がある株式会社コー・ワークスでサラリーマンをしながら、テレワーク(時間や場所の制約を受けず働くこと)で青森県三戸町に移住し、仕事を行なっています。雇用されている会社のコー・ワークスでの私の役目は、ITを活用した地域活性事業です。具体的には、地域のIT人材育成やプロモーションですね。

例えば、三戸町という地域のPRのために、全国からライターさんを募集して賞金制のコンテストを実施してみたり、鹿角市という地域では女性起業家が生まれるような人材育成事業も行なったりしています。だいたいどこの企業も地域のプロモーションをするときは、動画を撮影して東京でイベントを開催するなど一過性で終わってしまうものが多いんです。一方、コー・ワークスは持続可能で、その地域の魅力を見つけやすくする仕組みをつくり、持続性のあるプロモーションをしています。

ーどうして地域活性化の仕事に携わろうと思ったのですか。

私は、秋田県の秋田市出身なのですが、26歳まで秋田から出たことがありませんでした。その後転勤で仙台や東京でサラリーマンとして働いていたんです。秋田でやっていることと全く同じ仕事をしているのに、マーケットの大きさで成果が何十倍、何百倍も違うことに驚いたのを覚えていますね。そんな自分の転機は、子供の誕生と3.11でした。

自分の生き方を見つめ直した時に、せっかくならば、地元である東北のために活動したいという思いが強くなったっていったんです。それ以降、東北の食べ物に以前より魅力を感じたり、あまり気にしていなかった東北地方の景色も以前より綺麗だと感じるようになりました。仙台を起点に東北各地で仕事をするスタイルが続くと思っていたのですが、仕事で行った三戸町が気に入ってしまい、移住しようと決めました。これは予想外でしたね(笑)

ー東北にも数ある市町村がありますが、その中でも三戸町のどこに強い魅力を感じたのか気になります。

いくら東北が好きとはいえ、地域の方との絆を深め、受け入れてもらうのって大変じゃないですか。イメージとしては、地域に迎え入れてもらうために、住民の方と深夜までお酒を付き合って、仲良くなってようやく地域の深い話しができるみたいな。地域の一員として認められるまですごく時間がかかると思っていたんです。

それが、三戸町は全くありませんでした。自分がチャレンジしたいことがあれば住民の方々が、応援してくださる。そんな環境で過ごすうちに、いつの間にか三戸町を拠点に活動していきたいと思い始めました。自分の会社コー・ワークスには、テレワークという働き方が選べます。本人がやる気出して売上が上がるならどこの場所で働いてもいい。それは会社のメリットにもなるという代表の淡路の考えです。働き方に柔軟な会社ということもあり、早速三戸町に移住を決めました。

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自分の三戸町での役割は翻訳家!外部視点だからこそ地方の掘り起こされていない価値に気づくことができる

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三戸町のリンゴ農家さんの一枚

ー三戸町に移住してからの五十嵐さんの活動を教えてください。

活動を説明する前に、自分のキーワードについて話しておく必要があるかと思います。三戸町での役割は「翻訳家」です。私のいう「翻訳家」とは、ITの世界をわかりやすく住民の方に翻訳して地方で活用するという意味です。地方だとITと言われてもピンとこない方が多かったり、そもそも怪しいと思う方が多いんです。でも地方こそ、ITを活用することによって価値を向上させたり、生産性をアップしやすい環境だと思います。なので、自分の活動を信頼に変えて、ITのメリットを翻訳してわかりやすく住民の方に伝えることで、理解をしてもらっています。

例えば、お子さんをお持ちのお母さんにプログラミングを教えてみたり、在宅でできるデータ入力の仕事をレクチャーしたり。田舎はIT関連の仕事に就く選択肢もなければ知る機会も少ないので誰もやらない。だから私は、選択肢と知る機会を提供しています。あとは、自分が外部目線で三戸町の掘り起こされていない価値をクラウドファンディングで発信したり、世界と繋げたりしています。

ー三戸町とクラウドファンディング。そして世界を繋ぐ活動。聞こえはいいですが、住民の方の反応はどうだったんですか?

そもそもの前提なのですが、地域の住民の方は三戸町が外部へ訴求できる地域資源がたくさんあるということに気づいてないんです。地域産物としてリンゴがあるんですが、それさえも大きな価値を感じていない様に見えました。私は秋田県出身で、秋田にもリンゴはたくさんあるのですが、三戸町のリンゴの方が美味しく感じたんですよね。なんでか理由を探していくとどうやら日中の寒暖の差が激しいらしいぞと。

冬は最高気温が1度で氷点下11度、逆に夏が最高38度で最低19度とかなんです。厳しい環境であれば強く育ち旨味が出るのがリンゴ。三戸町は寒いけど雪はそれほど積もらないので、りんごの収穫時期を一番美味しい時期まで遅らせられる。雪が積もってしまうと、リンゴの収穫さえもできなくなってしまいますからね。

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青森県三戸町の取れたてのおいしいリンゴ

そうして他の地域とのリンゴとの差別化ができてきました。中でも印象的だったのが一昨年で途絶えてしまったホップ農家でした。地域に地ビールを作れるホップがあるけど地酒がない。さらに他地域と差別化できるりんごとりんごジュースがある。売れる商品があれば、ホップ生産を復活させられるのではと考えました。だったらりんごビール作ろうとなったんです。

「でもそんなの売れるわけない。」と農家の方には言われました。でもりんごビールの材料となるりんごジュースを知ってもらう視点でクラウドファンディングをしたら、16万4000円も集まったんです。これは、三戸町の道の駅の1ヶ月分を超える販売量だったそうです。これには協力してくれたりんご農家の方も驚きでした(笑)

ー自分たちの価値に気づけていないというのは意外でした。内部と外部評価は違いますもんね。

世界に輸出したい!と発言した時も「そんなことできるわけない」と言われました(笑)でも結果的にタイへの輸出した第一弾が約1週間で完売し、タイのバイヤーが直接三戸へ追加のりんごを買いにきました。みなさん驚いてましたね。クラウドファンディングや海外への輸出の成功が重なっていくうちに、地域の方も主体性を持って新しい挑戦に取り組みたいと考える積極的な方が増えたように感じます。

地方で活動していく上で大切なのは「笑顔・挨拶・何をしたいか」そして実行し続けること

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五十嵐さんと三戸町や周辺地域と地域外ゲストのみなさん

ー五十嵐さんのお話を聞いてるとかなり住民の方と良好な関係を気づけていると思うのですが、何か心がけていることはありますか?

地方に移住し活動するにあたって、大切なことは2つあると思っています。1つ目は、「笑顔・挨拶・自分が何をしたいか」です。笑顔、挨拶については説明不要だと思いますが、自分が何をしたいかに関しては、いろんな方に明確に伝える必要があります。都会に住んでる人は幼少期に「知らない人に声はかけちゃダメ」と親から言われてると思います。でも地方は逆で、「会った人には挨拶しなさい。」なんです。

挨拶ができないとなんだかわからないよそ者が来たと悪い噂がたってしまうんですね。だから会った人には、挨拶して笑顔で接する。そして自分が何しにきたかって言うだけで受け入れられ方が大きく変わります。2つ目はとにかく実行することです。住民の方が想像できないことをいくら言って不信がられるだけです。まずは、何をやっているかを行動によって明確に見せてあげる。理想をいくら掲げていても、ただ話してばっかりではダメです。信頼を得るためには即行動するしかありません。この2つを実行するだけで、味方が大きく増えます。全然自分のやってることには関係ない80歳のおばあちゃんとかに声かけられて応援されたりするんですよ(笑)東京じゃありえないじゃないですか。

ーそんなこと東京ではまずないですね...地方ならではの現象だなと思います。

しっかり活動していれば、見てくださってる方が勝手に宣伝してくれる。でもその見てくださってる方からしたら、五十嵐淳がいるおかげで、いっぱい人を呼んでくれると思っているんです。その結果私は自分のことを普通の人間だと思ってたけど、価値のある人と言ってくださる方が増えました。でもそれは、三戸町にも価値があるから価値交換にすぎません。三戸町では当たり前のものを外部視点で価値を見出すとことで、都心部から人がきてくれる。その結果住民の方は喜んでくれる。価値交換をしてる状況ですね。

地域の方達がフィルターになり、スムーズに活動できています

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三戸町の自然溢れる風景

ーここまで聞いていると五十嵐さんの地方移住は非常にうまくいっていると感じたのですが、逆に失敗したり、揉めたなどのネガティブな経験はなかったんですか?

あまり思い浮かばないですね。ただ、他の地域で失敗してたことを結果的に回避していた事例はあります。地域事業をしていくと、利害関係者じゃないと思う方に決定権があったりするんです。「お前がやってる仕事は、あそこの畑のお父さんに許可とれよ。」などと言われることもあります。地元出身ではない、よその人がやってることを面白くないと思う雰囲気が地方にはあります。三戸町はいないと思っていたのですが、どうやら地域の方たちがフィルターになってくださっていたんです。

具体的には、衝突してしまいそうな相手とはできる限り会わないようにしてくださったり、外部の人を面白く思わない人に、自分の活動のことをあまり言わないようにしたり。そのおかげで、地元の方など揉めたなどの大きな失敗は思い浮かびません。今後地方で起業を考えられているならば、利害関係や決定権に関しては慎重に動いた方がいいかと思います。

ー聞けば聞くほど三戸町はすごく外部の方に寛容的な地域なんですね!

役場の方もすごく協力的ですし、周辺地域の人たち同士も仲がいいです。町長とも一緒に飲みに行ったりするほど距離が近いですね。自分を紹介してくださることも多いですし、外部から知り合いが来た時は町長に紹介したりもしています。色々な方に紹介していただくことで、本当に行動しやすくなったと思います。

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ー五十嵐さんと同じように地方で起業されてる方と繋がりたい場合も同様に紹介が多いのでしょうか。

他の地域で頑張っている人は活動していれば勝手に繋がっている印象ですね。外部の方との繋がり、今の出会いを大切にしていれば自然と繋がっていきますよ。自分自身も東京にいたときのネットワークが新しいご縁を作ってくださって、ビジネスに繋がったこともありますし。考え方としては、いまあるご縁を大切にして、細くてもいいから永く付き合うことを心がけるといいと思います。

地方で起業したい人たちに自分の知識やノウハウを提供して、活き活きした人を増やしたい

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ー会社に所属しながら、地域で活動されていますが将来的な独立は考えているのでしょうか

現在所属しているコー・ワークスが大好きなので、会社を辞めての独立は考えていないのですが、自立はしたいと思っています。いわゆる兼業です。会社の力だけでなく、自分の力を加えた両面で地域の活性化に取り組みたいと思ってますね。

そのために具体的に取り組んでいることは、自身が力をつけるためのインプット活動と、地域の方々との協働活動の2つ。インプット活動では、仙台市主催の社会起業家養成講座に参加してみました。協働活動では、現在進行形で進んでいますが、農家やクリエイターの方との商品開発、や地域に根ざした神社や駅前の再生などに取り組んでいます。

ー最後に五十嵐さんの今後の目標を教えてください!

今は、地域周辺で起業したい人たちにはノウハウやナレッジを得られる取り組みをしています。今後はコー・ワークスと自分が地域事業をやっていく中で得たことを仕組み化して提供したいと考えています。価値の掘り起こしやクラウドファンディング、海外への輸出、勉強会での知識共有など伝えらえることはたくさんあります。仕組み化がうまくいき、地域で活き活きしてる人が増えていけばいくほど、東北が盛り上がる。地方の方が活躍しやすい世の中になっていくのではないでしょうか。地方で起業したい人にしっかりと知識やノウハウを提供して、活き活きした人を増やし、東北を盛り上げようと思います。

株式会社コー・ワークス

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執筆者:中村創

協力 ローカルクリエイターラボ