【長野県で起業!】目指すはザ・ドリフターズのような会社〜最先端の3D技術で製造業を応援したい〜

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地域で活躍する多様な起業家を特集するこの企画。長野県塩尻市で3次元デジタルデータの有効活用事業をメインにさまざまな展開を見せる「株式会社プロノハーツ」。代表取締役の藤森匡康さんに地方で活躍する秘訣をお伺いしました。

目指すは、ザ・ドリフターズのような会社?!

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

長野県の塩尻市で3次元デジタルデータの活用をメインに事業展開をしています藤森匡康と申します。私は塩尻市の出身なのですが、東京で進学就職をし製造メーカに入社しました。勤務を続けて行く中で、もっとこの技術をものづくりの現場で活用したいとの想いが芽生え、07年10月に株式会社プロノハーツを設立しました。現在は8名のスタッフとともに事業を行なっています。

プロノハーツという社名は”プロフェッショナルの心(ハート)”を意味しています。会社理念でもある「プロフェッショナルの心と志を持って、皆様から「ありがとう」と言われる企業を目指す」という想いで事業を行なっています。最初は”皆様”という部分は”お客様”を対象にしていたんですが、お客様だけではなく、社員とその家族、取引先の方、地域の方、次の世代の方など、皆様を応援し、ありがとうと言って頂きたいと思っております。

ー事業について具体的に教えてください。

先ほどお話したように3次元データの活用を軸に、大きく分けると、製造業の方に3次元データの活用についてのコンサル事業、商品の企画開発事業、製造業のVR・ARシステムの開発事業の3つの事業を展開しています。

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ーさまざまな分野で事業を展開されていますよね!

最初は「自分が10人いればすごくいい会社が作れる」と思っていたんですよ(笑)でも、今思えば自分と同じような人が働いている会社だったら今まで続けていられなかったなと思います。いろんな人がいるから会社って成り立つんですよね。私はザ・ドリフターズのような会社を目指しているんです。さまざまなプロフェッショナルの方がいて、その尖った人たちがそれぞれプロジェクトを作って進めていける。そんな会社にしたいと思っていて。部署ごとに各々やっていることが全く違うので、面白いですよ。

医療機の商品開発やバーチャルリアリティーを開発している人もいるし、「3Dモデラボ」という3Dデータの共有や3Dデータのダウンロードを無料で行うことができるコミュニティーサービスの運営を行なっている人もいます。みんな特技があるので、それぞれが活躍できる場を作っていきたいんです。最終的にはスタッフ全員が独立できるような仕組みを作りたいなと思っています。

人との出会いが運んでくれる新しい挑戦

ー本当にさまざまなことに挑戦されているなと思うのですが、そのような情報はどこから仕入れられるんですか?

これは人との出会いが運んできてくれるんですよ。常にたくさんの人に会うようにしているので、そういった出会いの中で新しい情報を得ることが多いですね。面白いことにはどんどん挑戦していきたいなと常に思っています。

前にやったのが、アニメの「ドラゴンボール」の「元気玉」をイメージした「いいね玉」で、元気のかわりにSNSの「いいね」を貯めるとどんどん球体が大きくなる装置を作ってみたり、ダンボールで実物大の”ナンマンゾウ”を再現したり、様々な頃に挑戦しています。他にも、2013年にはVRシステムなどを開発する株式会社エクシヴィと共同で、ボーカロイドの「初音ミク」と握手をしようという「ミクミク握手(Miku Miku Akushu)」というシステムを開発しました。

VRヘッドセットを被って、シリコンで出来た手の模型と握手をすると、本当に初音ミクと握手をしているような体験ができるというものでした。エクシヴィとはこの他にも、ドラえもんの「どこでもドア」が疑似体験できる技術を開発し、フランスで2014年7月に開催した日本文化の総合博覧会「Japan Expo」、同年10月に国内で開催したコンテンツ技術の展示会「DIGITAL CONTENT EXPO」で展示しました。

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また、塩尻市は木曽漆器が名産品になっているのですが、そういった伝統工芸と3Dプリンターとの融合で新しいものを生み出すプロジェクトなども行なっています。こういった“地方ならでは”といったコラボができるのは面白いところですね。これらは、利益はなかなか取れなかったけど、VRの活用を模索して行く中での施策だったのですが、こういった経験からを製造業にどう生かすかというのを学びました。私は、今後ドラゴンボールに登場する「スカウター」のように目元のグラス型の機械にさまざまなデータを集約して情報を得ることができるようになると考えています。なので、今はそのためにさまざま勉強を重ねているんです。

ーこれらの経験を通して、現在はどのようにVRを活用されているんですか?

例えば、フォークリフトや農業機器の乗車部分を3D CADで設計しても、実際にどれくらいの大きさになるのかなどは3Dや画面の中の3次元モデルだけでは分からないですよね。そこでVRを用いて、「実際にどれくらいの大きさなのか」「この部品を設置する場所はここで問題ないのか」など今までは組み立てた後でなければ気づけなかったことを知ることができるようになります。こういった活用法は製造業の方に喜ばれていますね。

ー長野県で事業をされていて大変に感じる部分と良い部分について教えてください。

情報に関しては半歩くらい遅れている気はしますね。あとは「人を集める」という部分では少し苦労しますね。それでも今はインターネットも発達していますし、昔にくらべたら都心と地方の情報格差は小さくなっているとは感じています。長野でやっていて良いところは、自分の地元に社会貢献ができているということです。他にも自分の同級生と仕事をすることができるなど楽しいですね。

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塩尻市内の企業、中信紙工と取り組んだ、塩尻市立図書館からの依頼で製作した段ボール製の1分の1スケールのナウマンゾウ模型

自分がいなくても運営できる会社を作る

ー本日も東京で取材をお受けいただいていますが、結構県外にいらっしゃる機会が多いんですか?

塩尻の本社オフィスにはほとんどいないですね。週に1回出勤するくらいです。全国にさまざまな所に出かけていますし、都内にも頻繁にきています。私がいなくてもスタッフのみんながしっかりとビジネスを動かしてくれているので安心して任せられます。多分、1年間という短いスパンで考えた時、自分がいなくても会社はどうにかなると思うけど、他のメンバーがいなくなると大変だと思いますよ(笑)でも、会社ってそうあるべきだと思っていて、私がいなくても業務が回転出来るというのはとてもありがたいことですね。

ーなかなかそこまで人を育てるのも難しいと思うんですが、何か秘訣はあるんですか?

教育という教育はしないですね。仕事をやりながら習得して行くしかないと思っているので、私は、場を作ることしか出来ないと思っております。採用の際に”ピーン”ときた人に入ってもらっているので、そこまで大変さを感じることはないですかね。この”ピーン”という部分を言葉にするのは難しいですね(笑)
これは多くの人にあって、経験をして行く中で養われるものだと思っています。

ー「人と多く会うことが人を見る目を養う秘訣」ということでしたが、人とコミュニケーションを取られる際に気をつけていることはなんですか?

「5give 1take」(自分が5与えたら、自分に1返ってくればOKだと考える)を心がけています。それくらいでやっとギブアンドテイクは成り立つんだと思うんですよ。自分でやったつもりでいても、相手は何も感じていないことも多いと思います。自分ばかりとは思わず、まずはギブを意識して行うようにしています。

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ー今後の目標を教えていただけますか?

今後は先ほども少しお話した3Dモデラボを中心に製造業の情報を発信する場を作っていきたいと考えています。それと合わせて、製造業の広報のアウトソースに力を入れていきたいです。

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製造業の方の中には「広報活動が苦手」という方が結構いらっしゃるんですよ。

せっかくいいものを作っても、それをPRできる場がないとビジネスは成功しないので、そういった部分のサポートをしていけたら良いのではないかと考えています。

ーこれから起業を考えている方にメッセージをいただけますか?

あくまでの”起業”は”手段”でしかないということを忘れないことが大切だと思っています。起業をしたいから会社を作るのではなく、やりたいこと、成し遂げたいことを達成するための手段として起業という選択があるということを忘れないで欲しいです。そして、起業にはリスクがつきものです。会社を作ったからと言って幸せになれるとも限りません。でも、「一度きりの人生」だと思うので自分のやりたいことを挑戦することは素晴らしいことだと思います!

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執筆者:桃井美里

(助っ人編集部)