【熊本県で起業!】五木村の村民を全力で幸せにしたい!

INACOME

地域で活躍する多様な起業家を特集するこの企画。熊本県の熊本県の南部に位置する五木村。人口1,000人という小さな村で、少しでも村の人の日々を楽しく、快活に過ごしていくために自分ができることをしようと起業した土屋希生さんに田舎ならではの苦労や今後の目標、五木村の魅力について伺いました。

INACOME

「活かす」「作る」「食べる」「つなぐ」地域を元気にする4つの事業

ーまずは簡単に自己紹介をお願いできますか?

株式会社「日添」の土屋希生と申します。私の出身地である熊本県の五木村という人口1000人の村で、代表である夫と2人で事業を行なっています。

ー具体的にどのような事業を行なっているんですか?

大きく分けると、「活かす事業」「作る事業」「食べる事業」「つなぐ事業」の4つの事業を行なっています。まず、「活かす事業」では、五木村の住民1000人のできることから始めるもうひとつのお仕事づくりをしています。これは村の人たちがもともと持っている力を生かして、それを本業とは別のもう一つのお仕事として収入を得られるようにサポートしていく事業です。村の人たちの中には大工さんじゃないのに家を建てれる人や養蜂家じゃないのにはちみつを作れる人、職人さんじゃないのにめちゃくちゃ美味しい饅頭を作れる人などたくさんの能力を持った人たちがいるんです。

INACOME

もちろん、みなさん他に仕事をしているのでそれが本業ではないんですが、普通にお金を取れるレベルのものができるんですよ。なのに、本人たちがその価値に気づくタイミングもなかなかないので、タダで提供したり、東京じゃ考えられないくらい安い値段で売ったりしているんですよね。これはもったいない!と思ったんです。今の仕事で生計をたてながら、自分の得意なことやりたいことでビジネスを始める。そこに収入も付いてきたらもっと村の人の生活が潤うんじゃないかと思うんです。でも、村の人たちはそのために何をどうすればいいのかわからないので、そのお手伝いができればと思っています。うちの代表がパッケージなどのデザインをすることができるので、商品をブランディングして売り出そうと考えています。

ー少し聞いただけでも村のみなさんの能力がすごいですね!他の事業についても教えてください。

「作る事業」では、先ほどお話したように代表がデザインをすることができるので、商品のパッケージや、チラシなどを作成していく事業です。自社の商品のデザインだけでなく、受注もやってます。

INACOME

「食べる事業」はカフェの運営を行なっています。これは1000人のもう一つのお仕事作りにも通じるのですが、村の人たちが作った野菜などの食べ物を提供できる場所を提供したいとの想いと、友人の五木村で飲食店を開きたいという想いを実現したいという想いで開業しました。私はかねてから「五木村だからできない」という考えや感覚をできるだけなくしたいと思っていて、だからこそ、五木村で飲食業をやりたいという想いが実現できるようにサポートしたいと思ったんです。

INACOME

お店を作るために五木村の人や様々な大学の学生にも手伝ってもらったり、ロゴを決めるにも私の友人100人くらいに投票してもらったりなど多くの人を巻き込んでお店の準備を進めました。いろんな人に関わってもらうことで愛着を持ってもらうことが大事だと思っているので、「この壁俺が作ったんだ!」とか「このロゴは私の意見が反映されているの!」といってもらうことが一番の宣伝になると思っています。

INACOME

カフェには商店機能をおきたいと考えていて、ここで村の人が生産したものや、カフェ周辺の人が似購入できるような日用品の販売を行いたいと考えています。

INACOME

「つなぐ事業」は人材マッチングを行なっています。将来、五木村のことを考えてくれる人材をつなぐ事業として捉えていて、実践型インターンシップを行なっています。大学生の他にも五木村で働きたいという方のサポートも行っています。

大好きな村の人たちのためにできることを考えた結果の「起業」という選択

ーいつ頃から起業を考えていたんですか?

私はもともと起業にそれほどこだわりはなかったんです。大学4年生の4月に、就活をしていて、「自分に軸を持って働きたい」と思ったんです。その時に、自分が本当に大事にしたいものってなんだろうなと考えた時に、自分は五木村の人が本当に好きなんだなとしみじみと実感したんです。何かきっかけがあったわけではないんですけど、私は五木村自体が好きなのではなく、村の人が好きなことに気づいたんですよ。そんな大好きな人たちが日々を楽しく、快活に過ごしていくためには何が必要なんだろうということを考えるようになりました。そのためには、地域活性や地方創生について何も知らないので、まずは修行だと思い、東京にあるNPO法人ETIC.という会社に修行に出ることにしたんです。

はじめから五木村に戻ることは決めていたのですが、この時点では将来起業をしようとは思っていませんでした。仕事をしていく中で村のためには人と人をつなぐことと、仕事をつくること重要だと考えるようになりました。村に戻ったのは去年の4月なんですが。その時に自分のしたいことを叶えるためには事業にしてしまったほうがやりやすいなと思って起業したんです。起業が目的なのではなく、起業はあくまで手段なんですよね。なので今だに起業家って言われるのが苦手ですね

INACOME

ー 4つの事業をされているということですが、事業によっては利益を得るのが難しい分野もあるように感じたのですが、その点はいかがお考えですか?

そこはすべての事業で補い合いながら運営していければいいかなと思っています。活かす事業ではまだ利益を生むことは難しいのですが、作る事業やつなぐ事業ではある程度の収入を得ています。カフェの運営はまだ始まったばかりなので、どこまでの収入が見込めるかわかりませんが、一つの事業体ではないからこそいろんなことに挑戦できると思っています。よくスケールしない事業だねって言われてしまうんですが、正直そこまでスケールすることを望んでいなくて…

何かを欲しいと思った時にすぐに手に入らないような環境で育ったことも影響しているのかもしれないのですが、私自身、昔からあまり物欲がないんですよね。ものが手に入らなくても、お金持ちにならなくても十分幸せなんです。そういう面ではすごく得をしているなぁと思います。もちろん、ボランティアではないのである程度の収入を得ることは重要だと思いますが、私の目標は、村の人たちが日々を楽しく過ごしてくれることなので、そこが叶えばいいかなと思っています。 お金を稼ぐことが悪いというわけではなく、そこは価値観の問題かなと思っています。

1000人の村だからこその苦労と、1000人の村だからこそできること

INACOME

ー五木村は人口が1000人ということで、村だけで利益を生んでいくことは難しいのではないかと考えますがそのあたりは何か対策をされてらっしゃいますか?

そうですね。五木村だけで生きていくのは現実的に難しいと思っていて、そのためには人吉球磨地域、熊本県、もっと大きく見ると九州全体がもっと発展していくことが大切だと思っています。そういった村の外の地域からお仕事をいただき、収入に変えていくことも重要になると思います。実際につなぐ事業では五木村以外にもインターンシップを行なっているのでそういった村外から収入を得ているので、今後もこういった案件を増やしていきたいですね。

ー地方にいると都心に比べて情報の伝達が遅いなんてことを耳にしますが、情報を得るために行っていることはありますか?

私は東京で働いていたので、東京都の比較になってしまうんですけど、地方にいると情報を自分から取りに行かないとあっという間に置いて行かれてしまうんですよね。なので情報は積極的に自分から取りにいくようにしています。具体的にしていることは学生の頃からチャレコミという地域活性を考えるコミュニティーに所属していて、現在もそこで情報収集をしていますね。今でもそこの方たちとの繋がっていて、先輩たちに多くのことを教えてもらっています。彼らが地域で仕掛けていることが、最先端でとにかく面白くて、全国に師匠がいるようで心強いんです。本当に私はここに育てられましたね。しかもお節介の集まりで(笑)めちゃくちゃ可愛がってもらっていて、「土屋頑張れよ!」といつも背中を押してくれるんですよ。

ー五木村で事業をしていて大変だと感じることはどんなところですか?

これくらいの田舎になると起業に必要な書類を提出するのにあちこち動き回らないとできないというのは大変でしたね。そういう大変なところは代表がやってくれたんですけど(笑)車で1時間近く離れている場所に書類を提出しなければならないということもあって…そこは面倒だったと代表も言っていました… あとは物流の問題です。実は五木村は佐川急便が週に2回しか来ないんですよ。何かを注文しても佐川さんで送られてしまうと、最大で4日待たないといけないなんてこともあります。

他にも五木村全体は電波は良好なのですが、カフェをつくった場所はソフトバンクが通じてないのでワイファイを設置するのも制限がありますし、そういったITインフラ整備については田舎ならではの不便さはありますね。ただ、書類の提出については,今後役所への提出書類の電子化も進むと思いますし、物流の問題もドローンなどが発展すれば解決すると思っています。

INACOME

ー田舎ならではの苦労があるんですね…

都会の当たり前が当たり前ではないので…つなぐ事業で実際に五木村に移住した友人がいるんですが、五木村に移住することのリスクはしっかりと伝えました。「ソフトバンクは繋がらないよ!」「村の常会には出ないと後の関係性が大変だよ!!」「村の行事は基本的には参加した方がよくしてもらえるよ!」とか、他の地域からくる人からしたらリスクになることをしっかり話した上で、それでも五木村に住みたいといってくれた人に来てもらっています。

事実を伝えることは大事だと思っているので。でも、それでも来てくれる人に対しては全力でサポートを行なっていっています。 これは、人口1,000人という規模だからこそできていることだと思っています。少ない人数だからこそ、ひとりひとり丁寧に対応することができるんです。私にはこれくらいの規模感が性に合っている感じています。だからこそスケールしないんですけどね。

最後の瞬間までそこに住んでいた人が幸せだったことが大切

ー土屋さんが考える「日添」ならではの強みを教えてください。

とにかく土地に根付いていることと、地域外の人とも繋がっているというのが強みですね。地域に根付きながらも外部の情報をキャッチアップして地域に活かせるという点が他社にはないところかなと思っています。

INACOME

ー事業をされていて辛いと感じることはありますか?

これは性格の問題かなと思いますけど、基本、寝たら忘れるのでそこまで辛いことはないんですが(笑)ただ、五木村の現実を目の当たりにした時に、いつかこの村が消滅してしまうのではないかという恐怖心を感じることはあります。たまに、この街が消滅していく感じがリアルに見えることがあって…それを思うと辛いですね…。

だからこそ、どうにかしなきゃ!強くと思うんですけど。でも、例えばこの村がなくなったとしても最後の最後の瞬間までそこに住んでいた人が幸せだったことが大事かなって思っています。私は村が好きというよりもここに住んでいる人が好きなので、その人たちが少しでも元気でご機嫌に過ごせるように、頑張っていきたいです。

ー土屋さんが事業を行う上で一番大事にされていることはなんですか?

とにかく、自分の好きなひとたちが”ご機嫌”でいてくれることです。それを見失わずに事業をしていくことが一番大事にしていることですね。あとは誰に向けてこのサービスを行うのか、その相手の顔が見えることも大事にしています。村の人という大きなくくりで見るのではなく、あのおばちゃんを喜ばせるためにこれをやろう!あれをやってみよう!と考えることで、ひとりひとりにあったより良いサービスを行うことができると考えています。

INACOME

ー地方で起業を考えている人へのアドバイスをお願いします。

地方での起業は、「地方」を「どう」活用するかが重要ではないかと考えています。物価が安いという利点を利用するもよし、地域で新しいことをすると目立つことができるので注目を集めるのもよしだと思います。ただ、地域で活躍していくためにはその地域ならではの風土や人間性を肌で感じて人に教えてもらうことも重要です。そのためにはキャラを持つことが大事なのではないかと考えています。「あいつって〇〇だよね!」って言われる人間になるといろんなことがやりやすいのではないかと思います。私は「男っぽい」とか「よく笑う」っていうキャラクターで活動しています(笑)あとは、とにかく好きなことをやればいいと思うんですよね。自分の好きを突き詰めることは大事だと思います。

INACOMETwitter

執筆者:桃井美里

(助っ人編集部)