地方で起業!林業と並行して山と街をつなぐ活動を続ける【今西林業】

INACOME

宮崎県宮崎市にある「若草HUTTE & co-ba Miyazaki」は、1階がカフェで、2・3階がコワーキングスペースです。林業に関わる山師の兄弟、今西猛さんと今西正さんが経営しています。2人とも美郷町渡川地区で生まれ、一旦は福岡に出たがUターンし、親の代からずっと携わる林業を続けながら並行してこちらを運営しています。これまでの経緯や、これからの展望を正さんに聞きました。

オープンの目的は自分たちの生まれた地域の継続

ー今西さんは一旦渡川地区を出て、戻っていらしたのですね。

今西)私と弟、2人ともUターンしてきました。私は就職で福岡に出てから2年半前に、弟は10年以上前にに福岡からUターンしました。もともと親がずっと林業をやっていて、私も戻って林業をやりながらしいたけも作っています。生まれ育った美郷町渡川地区は今は人口が350人です。限界集落なので高校がないため、中学卒業とともにみんな1回は宮崎市や日向市にでます。

ー若草HUTTE & co-ba Miyazakiのオープンの目的はどういったものでしたか。

根本的な目的は、地域を継続させていく事。林業をやっているのも同じ理由です。若草HUTTE & co-ba Miyazakiは山と街を繋ぐ存在として、山の出口・入口を作れたらいいなと思ってやっています。出口は地元のしいたけや野菜や加工品を持ってきて販売すること、入口は山や林業や美郷町に興味を持って持ってもらう事。そういう風に物や人の交流が積み重なって、地域のためになればいいなと。特に、林業はあまり情報が発信されていないですから。押し付けでなく自然に、山へ関わる敷居を下げるきっかけになればと思います。

ー2階、3階はコワーキングスペースなのですね。

コワーキングスペースは、これまで郊外にしかなかったんですよね……。あったら絶対便利なのと、今後必要なスペースだと感じました。もともと建物は10年くらい空いていたビルだったんです。大手ショッピングセンターができる前やインターネットショッピングが今ほど盛んではなかった、30・40代の僕たちが高校生だったころは、活気があって、背伸びして遊びに行くような場所でした。ここにお店を開けることによって活気を取り戻せるのではないかと。コワーキングスペースはいろいろな価値観・職業・年代の人がつながることでいろんな可能性が広がり、街にとっても山にとってもいい影響が及ぶのではないかと思っています。

ー地方創生がひとつのキーワードになっていますけど、自分たちの生まれた場所を盛り上げようという想いを持つ方が多いんでしょうか。

地元にはそういう思いを持って活動している団体・仲間がいます。きっかけになったのは、小学校・中学校が閉校したことです。田舎って、学校が中心なんですよ。それがなくなると子どもの声も聞こえなくなるし、本当に元気がなくなる。それに危機感を持った人たちが集まりました。

オープンまでの苦労・資金集め

ー若草HUTTE & co-ba Miyazakiの構想はどのようにできたのですか。

山で活動しながら情報を発信したり、山でイベントをやって山に足を運んでもらったり、いろいろやってきたのですが、少しずつ限界を感じてきました。街に拠点があればできることが広がるかな、と。山間地域では鹿や猪による被害が深刻です。農業や林業で対策にかける費用や手間が大きな負担となっています。例えば、街の中で鹿の肉がいつも食べられるレストランを持ったとしたら、駆除した鹿の肉を、街で美味しく食べて貰って命を大事にする事にもつながります。消費が増えれば猟師さんにとっては収入になったり、被害が減ったり山へ良い影響が有りながら、街の方には山のことを知ってもらう一つの要素になります。

ーこの場所を作るとき、苦労はあったのでしょうか。

ここから山まで2時間かかるから、本業の林業をしながら準備を進めるっていうのがなかなか厳しかったですね。物件探しから考えてもオープンまで2年以上かかりました。その過程も理想や好きな気持ちを追求したら、この場所ができました。 実際はお店をスタートしてからの方が大変ですが(笑)

ー創業するにあたって、サポートは受けましたか。

みやざきスタートアップハブの1期生だったので商工会議所・市役所の皆さんにサポート頂きましたし、同じ1期生の方々からも刺激を受けました。

ーここを作るにあたっての資金集めはどのようにされましたか。

基本的に借り入れです。みやざきスタートアップハブでは金融機関の方々との関係も作りやすいので相談もスムーズでした。それに加えて、クラウドファンディング「FAAVO」も活用しました。クラウドファンディングは資金集めもですが、告知PR要素も大きかったです。

オープン一年半、現状とこれからの展望

ー若草HUTTE & co-ba Miyazakiができて年半か2年目どっちかでとのことですが、今後の展望をお聞かせください。

まず、宮崎でのコワーキングスペース自体の認知度がまだまだなので、広めていきたいですね。維持していくためにも、もっと売上をあげて力をつけていくのが大事かな、と。うちならではの出来ることがたくさんあると思うので、山の人間だということを活かして、イベントももっと増やしていきたいです。最近嬉しかったのは、学生が関わるようになったことです。商品のサンドウィッチでコラボしたり、鹿の獣害について調べたいから教えてほしいと言われたり。大学生インターン受け入れもしています。そういうのは、店がなかったら起こらなかったことなんで。

ーここがあることで、いろいろなものが生まれてくるのを感じますね。

今日もこれから2階でセミナーがあるんですよ。セミナー関係は県外の講師の方も多いのですが、講座を受けに集まってくる人も面白い人たちだから、ここで会って、仲良くなって、繋がって……場所をつくることが大事かな。昔山に住んでた出身者も来てくれるんですよ。70代、80代の方で、ここにくるとホッとするって。

ーこちらのお仕事の林業との割合はどれくらいですか?

私はお店の方に居ます。弟は山に居ます。私は山に入れていませんが、こういった役割も必要だと思います。広報活動・営業活動ができてるのでそれでいいかな、と。山にいるだけでは出来ない事も多いので。林業に若手がいない、っていうのも、魅力ややりがいを発信できていないのが一因ではないかと思っています。こんな山師がいて、こういう林業のやり方もあるんだと知ってほしいです。

例えば月の半分は山の仕事しながら、残りの半分は他の仕事をしてもいいんじゃないか?と提案しています。
今はインターネット環境iがあれば山にいても出来る仕事も多いですし林業はきつい、と思われてるけど今の仕事しながらでもできます。山に来てほしいし地元に帰ってきてほしいし。その為には、受け入れる側も大事かなと思います。そういうのが地域の生き残りとしては大切なところです。

ー地域の生き残りですか…。

地方のリアルです。Uターンといってももともとの私達の地域は元々のベースが少ないから、みんなが帰ってきても増えない。30年後には今の人口の半分になる、という予測が出ています。めちゃくちゃ子どもが生まれるとか、すごい人数移住してくるとかしないと変わらない。現状維持だけでも相当大変だと思うんです。住まなくても、関わってくれる人が増えないと。この場所が、入口・出口になって、商品販売などでお金を集めるようになって、情報発信もして、ここがそういったキッカケを作る場所にしていきます。

多様な働き方が当たり前の時代 失うのを恐れずまず一歩を踏み出す

ーこれから創業を考えている方に何か、背中を押すようなメッセージをいただけますでしょうか。

自分たちがまだ成し得ているわけではないし、成功者でもないのでアドバイス的なことは言えないんですが……。やはり、やってみるっていうのがいいのではないでしょうか。起業とか、移住もそうなんですけどまずはやってみて、ダメだったらまた考えればいい、やり直せばいいと思います。どうあるべき、とか考えなくていいんじゃないかな。好きなことを真剣に、ひたむきにやっていると、同じ仲間がいるので、なんとかなるかな、と。進まないことには変わらないですからね。