歴史を重ねてきたからこそ生まれる温かな雰囲気と、伝統や文化を感じさせる威厳。古民家を利用したカフェやレストランの注目度はこの数年でかなり高まり、もはやオシャレなお店の定番になったといえます。しかし、古民家で開業するためにはリノベーションや物件探しなどクリアしなければならない問題がたくさん。そこで、徳島県美馬市の「うだつの町並み」で古民家再生事業を行っている片岡さんにご自身のお取り組みについてお話を伺いました。
助っ人編集部
本日はよろしくお願いします。まず、一般的に古民家リノベーションに掛かる費用について教えてください。
片岡 久義
どこまでディティールにこだわるか、によりますが、多くの場合は新築するよりも高くつくことが多いですね。80坪くらいだったら、5000万円くらいは掛かることもあります。
G&Cコンサルティング株式会社 取締役会長 片岡久議。地域の課題を地元経営者と共にビジネスを通じて解決する「チャレンジプロジェクト」、山口県周南市のクリエイティブ産業化プロジェクトをプロデュースする「クリエイティブ産業創出プロジェクト」 、地方創生に関心のある若手経営者 と 地方自治体をマッチングすることを目的にスタディツアーや勉強会を定期開 催する「地方創生コンソーシアム 」などを手がける。
助っ人編集部
安くはないだろうとは思っていたのですが、新築より高くつくとは・・・。個人だとなかなか難しいですね。古民家で起業をしたいと考えている人がもう少し安くリノベーションをすることは出来ますか?
リノベーションしたうだつの町並みの古民家
片岡 久義
それがまさに、私の会社で取り組んでいる事業です。徳島県美馬市にある「うだつの町並み」という歴史あるエリアで古民家を利用して開業したいと考えている方のサポートをしています。
助っ人編集部
どんなサポートなんでしょうか?「うだつの町並み」のことも含め、ぜひ聞かせてください!
片岡 久義
「町並み一体型ホテル」というプロジェクトでサポートをしています。簡単に言えば、美馬市うだつの町並みで開業する方に向けて、物件の紹介とリノベーション費用を全額サポートしてお貸し出ししています。物件に加えて、町の一員になっていただくために必要な、もともと住んでいらっしゃる方たちとのリレーションシップ作りもお手伝いさせていただいています。
助っ人編集部
リノベーション費用を全額負担した上で貸し出してくれるんですか?さらにはきちんと町に馴染むためのお手伝いも。すごいですね。どういう経緯でそんなに良くしてくれるのでしょうか?
うだつの町並みの中のサテライトオフィス「森邸」
片岡 久義
この「町並み一体型ホテルプロジェクト」は、重要伝統的建造物群保存地区全体、つまり「うだつの町並み」全体を「ひとつのホテル」とみなして、地域の食文化・生活文化を再生したい、というプロジェクトなんです。つまり、移住してくる方が古民家を利用し、宿泊や飲食などの新たな事業を始めることで地区全体を活性化させることがねらいなんです。
助っ人編集部
「町並み一体型ホテルプロジェクト」って、そういうことなんですね。こういった考え方の事例はあるんですか?
片岡 久義
兵庫県丹波篠山市に「篠山城下町ホテルNIPPONIA」というところがあります。そこは国の史跡に指定されている篠山城の城下町全体を「ひとつのホテル」と見立てて、古民家4棟を宿泊施設や飲食店にリノベーションしているんです。中には築100年超の古民家も含まれていて、口コミサイトでも毎年5つ星になるような人気の宿になっているんですよ。
助っ人編集部
すごいですね!ミレニアルズ向けというか、SNS映えというか、最近は特にこういう歴史と趣のあるホテルって人気ですよね。
観光シーズンの秋には美しい紅葉も
片岡 久義
「うだつの町並み」もこういった町並みに溶け込むような宿泊施設にしたいと考えているんです。だから、リノベーション費用を負担して、古民家で創業してくれる人を募っているんです。
助っ人編集部
そういった背景があるから、サポートしていただけるんですね。ところで、「美馬市」「うだつの町並み」ってどんなところなんですか?
片岡 久義
自然に恵まれていてとても美しいところですよ。日本一の清流と言われている穴吹川が流れていて、毎年8月には「穴吹川筏下り大会」が開催されていた(2018年で終了)のでたくさんの観光客が来ます。
助っ人編集部
素敵ですね!海外の方からも人気がありそうな景観ですね。徳島県といえば、阿波おどりもありますよね。
阿波おどり
片岡 久義
そうなんです。毎年阿波おどりのために120万人もの観光客が訪れるのですが、徳島県で宿泊できるホテル旅館客室数は9千室強しかなくて。せっかく魅力的な観光資源があるのに、滞在してもらうことができないんです。
助っ人編集部
観光地に対して、宿泊施設が足りていないんですね。
片岡 久義
うだつの町並みも、台湾や香港から観光客が来るのですが、泊まるところが少ないために15分くらいで次の場所へ移ってしまうんです。だから、宿泊施設を増やしたいなと考えています。
助っ人編集部
地方での起業って憧れている人が多いと思うのですが、都会で育つと日常生活や町の人との関係が懸念点になるんですよね。美馬市・うだつの町並みではどうでしょうか?
片岡 久義
東京よりものんびりしていて、地方ならではの自然や歴史ある町並みがあるのはもちろんなんですが、車で2~3分行くと国道に出るんです。国道に出てしまえば、スーパーやファストフードなど生活に必要なお店は揃っているので、都会でしか暮らしたことのない人にとっても安心できる立地といえます。
助っ人編集部
憧れの地方起業と、便利な生活が両立できる立地なんですね。
片岡 久義
人間関係に関しても、うだつの町並みは元々「商人の町」なんです。だから昔から外部から来た人に対してオープンで、商売に対して理解があるという土地柄です。そして、高齢化が進んでいるから外からやってきた若者が頑張っていたら、お年寄りから可愛がってもらえると思いますよ。
助っ人編集部
土地柄的にも新しいことを始めやすい文化なんですね。これから移住者も増えるでしょうし、はじめて行く人でも安心ですね。
片岡 久義
地方移住といえば、2019年からは5年以上23区に在住あるいは通勤していた方であれば、住民票を移して地方に移住し起業すると最大300万円の補助金が出ます。美馬市へ移住して創業したいという方はこういった補助金も利用することが出来るので、助けになるかもしれませんね。
助っ人編集部
補助金も出るとなると、本当に地方起業へのチャレンジを後押ししてもらえますよね。片岡さんは、どんな方にうだつの町並みを盛り上げてほしいですか?
片岡 久義
やはり、飲食や宿泊施設をやってくれる方だと嬉しいですね。ラーメン屋さんをやりたい方なんかは、特におすすめです。というのも、閉店してしまったかつての人気ラーメン店の方が移住者でやる気のある方がいればノウハウを提供して支援する、という取り組みの話も出ていて。
助っ人編集部
かつての人気店の味を引き継いだお店ができれば、地元の方に人気が出そうですね。人柄でいうと、どんな方が移住に向いていますか?
片岡 久義
人と話すことや関係を構築するのが好きな方に向いていると思います。新しいお店でも信頼できるな、と一度思ってもらえれば足繁く通ってもらえるので。一緒に楽しくお酒を飲んでみたり、周りの人とコミュニケーションをとっていけるような人懐こい人なら絶対に合うと思いますよ。
助っ人編集部
せっかく地方企業をするなら、地元に寄り添う形で関係を作っていきたいですよね。本日はありがとうございました!
美馬市での起業に興味があるなら→MIMAチャレンジプロジェクト