INACOMEビジネスコンテスト2023において、「食品廃棄物の再資源化で持続可能な水産養殖業を」をテーマにプレゼンを行い、R5審査員特別賞を受賞した株式会社Booonの橋⽖海さんにお話を伺いました。
食品残渣×ミルワームで飼料の国産化へ
「INACOMEビジネスコンテスト」参加のきっかけ
農林水産省が企画するスタートアップ向けのピッチイベントとして知りました。ミルワームを育て、飼料原料として活用する取り組みを「農業(一次産業)」として捉えてもらう上で、こうした場に参加すること自体に意義があると考え、登壇を決めました。
参加したのは、シード資金調達を受ける前のタイミング。複数のアクセラレーターに採択され、研究開発助成金(約500万円)を得ながら、小さく事業を回していた段階でした。ちょうどOIST(沖縄科学技術大学院大学)のアクセラレーター参加中でもあり、そこから登壇のきっかけを得ました。
当時は資金的にも厳しく、自分は給料を取らずに進めていた時期だった一方で、参加によって「投資家への認知拡大」や「内容のブラッシュアップ」にも手応えがありました。審査員や他参加者の領域に合わせてピッチの内容を調整し、差別化や強みの提示を意識していた点も、参加の実務的な学びでした。
審査員特別賞を受賞後の反響は
ビジネスコンテストは、農水領域に焦点が当たり、そこで評価される機会自体が貴重でした。さらに受賞後も、知財マネジメントや弁理士の支援など、年に複数回のフォローアップを受けられるので、「農林水産領域で事業を伸ばしたい人にとって、光が当たるチャンス」だと感じました。
受賞当時は、ラボルームの一室を借りて生産検証を行っていた小規模段階で、実証実験用の飼料を十分に作れない状態でした。そこから転機になったのが、状況を理解して出資してくれる人が現れたこと。イナカムをきっかけに関心を持ってくれた投資家もいました。
現在は、隣接倉庫で年産約7.2tのミルワームを生産できる体制まで拡大(倉庫面積は約70坪)。これにより大規模な実証実験にも進めるようになり、大手水産会社と共同で取り組みを進行中です。
事業の核は「食品残渣から昆虫由来タンパク質へ」
発表から2年ですが、変化は
株式会社Booonが取り組むのは、食品残渣をミルワームの餌として活用し、昆虫由来の機能性タンパク質原料を製造する事業です。ミルワームは乾燥・粉砕などの加工を経て、魚粉の代替として水産飼料・畜産飼料の一部に用いられます。背景には、前事業で陸上養殖に関わる中で感じた構造課題があります。養殖の普及におけるボトルネックの一つが「餌代の高騰」。餌代の上昇で既存の養殖業者が疲弊し、赤字が拡大して閉業せざるを得ない状況も耳にしてきました。そこで、飼料の主要原料である魚粉の代替資源をつくる必要性を強く意識し、事業化に踏み切りました。
問題視しているのは、国内で消費される魚粉が年間約40万t規模で、そのうち約20万tが南米(ペルー等)からの輸入に依存している点です。残りは国内の水産加工時に出る魚のアラや内臓などを加工して魚粉化したものが原料になっています。一方で、海外産は原料が単一魚種で把握しやすく、品質が高いとされる側面もあります。国内の加工残渣由来では、加工した魚種の魚粉が同種の餌として回る可能性があり、倫理面での評価が課題になる場合があります。こうした構造を踏まえたうえで、飼料の国産化を進める国策にも目線を合わせ、「国産原料による持続可能な代替資源」をつくることを目指しています。
実証の一例として、クルマエビ用飼料における検証を進めています。クルマエビ飼料では、配合の中で魚粉が占める割合が約75%で、そこをミルワーム原料へ置換する検証を行っている段階です。観察されている効果として、免疫力の向上や発色の改善があり、味への影響は大きな差がありません。
スケーリングの次の壁は「用地」
今後の展開
次の目標として掲げるのが、年産200t規模の生産体制です。200tは、運用費用を織り込んで黒字化できるラインで、売上規模としては約1億円を見込める水準。ところが、必要となるのは現倉庫(約70坪)の約23倍規模の用地・倉庫で、地方でも適地確保が難航しているのが現状の大きな課題です。