レンタルで森林を多くの人と享受しながら守っていく:INACOMEビジネスコンテスト受賞者インタビュー

INACOMEでは、ビジネスモデルからはくみ取りづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。

今回は、令和4年度INACOMEビジネスコンテストにおいて、森林になるべく手を加えることなく約300坪の区画に区切り、キャンパーなどに年間単位でレンタルする「森林レンタルサービス forenta」のテーマでプレゼンを行い、優秀賞を受賞した株式会社山共代表の田口房国さんにお話を伺いました。

受賞したことで事業のお墨付きを得られた

――昨年度の「INACOMEビジネスコンテスト」への参加のきっかけを教えてください。

ちょうどサービス開始から2年が経ち、少しずつ類似のサービスが増えて来ました。私たちは森林の事業を行うエキスパートであり、当事者としてこれからの日本の森林経営の課題解決、山の未来、地域の未来のために始めた事業です。この面で差別化を図るため、コンテストに積極的に取り組んでいこうと考えていました。

そして本サービスは大きな投資をして改変していくのではく、森林そのままの魅力を引き出してそこに人がくる仕組みをつくり、マネタイズしていくというビジネスモデルです。このわたしたちの方向性とINACOME、そして主体の農林水産省の方向性は非常に近いと感じました。ここで認めてもらえたら、これまでの2年間取り組んできたことへのお墨付きを得られると思い応募しました。

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――コンテストに参加してみていかがでしたでしょうか。

いくつかのコンテストに参加して賞をいただきましたが、INACOMEは書類選考だけではなくプレゼンテーションがあり印象的でした。プレゼンテーションの準備や実際に発表して審査員の方々の話を聞いていくなかで、「どういった課題意識を持ってどうアプローチして、世の中をどう変えていくのか」という目線で再度事業を考えるということを学ばせてもらったと思います。

林業の問題、地域の課題に自分たちがどう役に立てているのかというのを改めて掘り下げて考えることで、次の展開、方向性について明確な道が見えました。また他の方の発表を聞いたり、交流会で話したりするなかで、当たり前ですが自分だけではなく全国の農林水産の分野で頑張っている人がいるという実感を得られたのは大きいです。

全国にサービスエリアが拡大していき次のフェーズの検討開始

――「優秀賞」を取られてから反響などはありましたか。

お客様などに向けてこのサービスの話をすると、「森林レンタルサービスではやはりforentaが抜けた存在だね」と言われるようになりました。参加目的でもある差別化という面で、当社の当事者としての目的意識などが伝わっていることが実感できます。そして何より、「自分自身がこれまでやってきたことが間違ってはいない」と認めてもらえたと感じました。課題意識や方向性は間違っていないので、あとはどう広めていくかをもっと具体化していこうと背中を押してもらいました。

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――発表から約4ヶ月ですが、変化等はありますか?

最近千葉県でも森林レンタルが開始してエリアが8から11に拡大し、レンタル区画が発表時の166区画から300区画強まで増加しました(2023年6月取材時現在)。 そして強みやサービスのコアは変えずに、次のフェーズに向けて、どんなものを付加していくか、というのを考えています。今回のコンテストで知り合った方々とのコラボレーションという可能性もあるかもしれません。

――森林の利用者が順調に増えていますね。そのなかでトラブル等はありませんか?

小さいものはありますが、問題になるようなものはありません。申し込みの前には必ず現地の森林を見ながら説明会をしています。そこで実際にお会いして、森林を大切に使ってくれそうな方を選ばせていただいているので、いままで問題が起きていないのかもしれません。

森林をオープンにしていく

――今後の展開を教えてください。

INACOME

まず直近のフェーズとしては、技術的な部分や仕組み的なところをブラッシュアップして、よりビジネスとして完成度の高いものにしていきたいですね。また当初の想定ではキャンパーさんの利用を考えていたのですが、ブッシュクラフト的な使われ方や、逆に木の枝などで階段などを作ったりするなど、こちらの想像以上の使われ方があることに驚きました。

利用規約はありますが、自然を大切にして、周りの方々を尊重しながら過ごしていただければ、基本的には自由に過ごせるようになっています。このようにそこにある空間そのものを楽しみたい方々と森林との仲を、より多く取り持っていけたらと思っています。

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シェアビジネスが拡大して世の中の価値観が大きくシフトしていくなか、いままで所有者以外は入ってはいけないと言われていた森林をオープンにして、そこに新しい経済をつくるということが大きな使命だと考えています。外部とも連携しながらより多くの方に向けて広げていきたいと思います。

<リンク先>

・株式会社山共/森林レンタル「forenta」webサイト(外部Web)