【INACOME起業者紹介】スープから始まる新しい経済のあり方(日本農業株式会社・大西千晶さん)

INACOME

農山漁村の活性化に向けて、地域起業者の交流を促すプラットフォームINACOME(イナカム)。ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。今回は、本年2月のINACOMEビジネスコンテストにおいて、「農の入口と出口づくりで就農者を増やす!畑と人を繋ぐ『たんとスープ』で6次産業化」をプレゼンし、最優秀賞を獲得した日本農業株式会社・代表取締役CEOの大西千晶さんにお話を伺いました。

未来への憂いと新しい経済の可能性

-どのようなビジネスモデルですか?

「就農者を増やすことで、畑を耕し、未来を耕す」を理念として大阪府と京都府で農場を運営しているのですが、その理念の実現に向けて農家直営スープ専門店「たんとスープ」の多店舗展開にチャレンジしています。店舗での出会いを通じて多くの方が農業現場に関われるきっかけを作り、店舗が増えれば増えるほど期間限定農家が増えるような仕組みを構築できれば、私たちが目指す「新しい経済のあり方」の実現に近づけると考えています。

-まずはビジョンを深掘りしたいのですが、農業とはどういった接点があったのですか?

1990年生まれで、環境問題や貧困問題などの社会課題がクローズアップされ始めていた時代の影響もあって、小さな頃から資本主義だけでない「新しい経済のあり方」みたいなものへの関心が高かったんです。そういう背景から、学生時代は積極的にボランティア活動に参加していたのですが、その活動の一環として18歳の時に参加した京都府南丹市での農業ボランティアが初めての農業との出会いになります。

その時受けた印象は「衝撃」の一言です。食の根幹である農業現場が過疎地帯になっていて、ものすごく「未来への憂い」を感じました。ただ一方で、もともと関心のあった「新しい経済のあり方」への可能性も強く感じました。農業であれば、耕せば耕すほど果実が実る木が残り、文化が残り、地域が再生します。資本主義社会で出てきた歪みのようなものは農業だからこそ解決できるのではないかと感じ、20歳の時に環境保全型の農業ベンチャーで起業しました。

根幹の産業の農業だからこそ出来ること

-他産業から社会課題を解決する選択肢もあったと思いますが、迷いはなかったのですか?

様々な社会課題がありますが、根幹の産業である農業には、環境問題やエネルギー問題、労働問題など幅広い問題を解決できる糸口があると思っています。農業を通じて、関心のあった問題を本当に解決できるのではないかというワクワク感が強かったので迷いはなかったです。また、私たちは「変革」への想いが強い世代だと思っていて、友人も含めて、自分たちの世代で何とかしたいという自覚は強いです。

2050年には世界人口が100億人を超えると言われている中、このまま開発を続ければ様々な問題が起こります。それに対して、SDGsを含めて世界が少しずつ動き出していますが、日本からも里山資源を活かした「自然とのバランスがとれた経済のあり方」のようなキラリと光る概念を発信できればと思っています。むしろ、そのような未来を次世代に繋ぐためのプロジェクトを実践できることが、今の時代に「生きる意味」なのかなと思っています。

野菜のマーケットチェンジを目指す

-今回のチャレンジでは、なぜスープがテーマなのでしょうか?

農業を実際にやってみて感じた課題として野菜を売ることの難しさがありました。産地ブランド化されたものであれば売れるのですが、そうでないものは中々難しい。マルシェなどで販売しても、どうしてもロスが出て計画どおりにいかない部分もある。そういった状況に対応するために、2次・3次の部分で付加価値を付けながら、ロスを減らすことができる6次産業化に注目しました。

その上で、スープをテーマにした理由は「おいしさ」や「馴染みのある」というポイントです。中長期的な目標として、野菜の可能性を最大限に引き出すために、販売先を「野菜市場」から「医療市場」に移す大きなマーケットチェンジを目指しています。

「食と健康」への意識の高まりに伴って、近いうちに薬の代替として人参やビーツが処方される時が来ると考えていて、そのような未来が来た時のためにコールドプレスジュースの加工・販売を始めています。ただ、実際にやってみると、「美味しさ」を伝えるブランディングも重要と感じ、消費者に馴染みがあって、小さい子どもから高齢の方まで野菜をたっぷりと食べられるスープに可能性を感じ、チャレンジすることを決めました。

-スープで新規就農者を増やす戦略はあるのですか?

店舗を出すことによって、店長やスタッフ、顧客など、様々な関係者が増えます。その関係者には繁忙期だけでも農場に手伝いに来てもらうような仕組みをつくり、「期間限定農家」を増やしたいと考えています。自然との調和のとれた新しい経済のあり方を浸透させるには、全員が独立就農である必要はなく、半農半Xのような関わり方でも十分と思っているので、「期間限定農家」を入口として農業に関わってもらえればと思っています。また、新規就農者は技術にバラツキがあります。形の良い野菜ばかりができるわけではありませんが、スープの原料として使えば特に問題はありません。そういった点もスープで新規就農を広げるポイントと考えています。

農業者の想いが伝わりやすい環境

-新型コロナによる影響はどうですか?

コロナで世界は大変な状況ですが、農業にとっては悪いことばかりではないのかなと思っています。会社設立当初から、自然から離れすぎた経済が不安という問題意識で農業を営んできたのですが、コロナによって自分たちの考え方が浸透しやすい環境になったと思います。実際、テレワークなどで働き方が変わったのをきっかけに、農業体験への参加相談は増えています。都心への勤務は月に数回で、基本的に地方にいるような生活ができれば、経済社会を生きつつも自然と共生するバランスの取れた社会が近い将来に訪れるのかもしれません。

2008年のリーマンショックも今回の新型コロナも経済的なダメージは大きいですが、その都度、農業・農村の価値が見直すような動きがあります。そう考えると、既に農業をやっている方はすごくチャンスで、自分たちの考えが伝わりやすくなっている今は、その想いを加速させて実現するだけだと考えています。私の「新しい経済のあり方」という話も、数年前はあまり理解してもらえなかったのですが、今はすごく共感されていることを実感しています。

農山漁村の活性化に向けて、地域資源を活用した起業者を支援するイナカム。プラットフォームでは、大西さんのように地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々と結びつくことが可能ですので、是非ご活用ください!

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