中小企業者の定義
製造業その他:資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 :資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 :資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 :資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
(参考:中小企業庁HP)
中小企業の利益向上における課題
中小企業白書に公表された、全体企業の課題として挙げられた上位3つは下記です。
第1位:新規顧客・販売先の開拓
第2位:優秀な人材の確保・人材育成
第3位:既存顧客・販売先の見直し
(注)中小企業の中で、売上高経常利益率上位25%の企業を高収益企業といい、 売上高経常利益率下位25%の企業を低収益企業という。
高収益企業、低収益企業ともに『新規顧客・販売先の開拓』がダントツの1位となりました。確かにいくら良い商品やサービスを持っていても、売る先がなければ会社として利益をあげることができません。では実際に何もないところからスタートした起業家の皆さんは、どのように『新規顧客・販売先の開拓』をするべきなのだろうか?
まずしっかりと認識すべきことは、商品やサービスをつくることと、それらを売っていくことは全く異なるプロセスであるということです。そのため全然違う力が求められます。商品やサービスがよい、悪いという言葉も相当に抽象的です。
例えば、松坂牛でできている牛丼と吉野家の牛丼はどちらがよい商品でしょうか?質の意味では、松坂牛でできている牛丼だと思います。しかし、ここに値段がついて、松坂牛でできている牛丼は4,000円、吉野家の牛丼は300円だとします。
あなたはどちらを買いますか?
必ずしも良質なものが、商品やサービスとしてよいものか?というと、そうでないということもあります。良い商品だと、一生懸命やっているほとんどの会社が思っています。ただ良い商品の”良い”というのは、質の観点だけでの話であることが多いわけです。この発想では商品は売れていかないでしょう。
理由は、4,000円払えば、松坂牛でできている牛丼が食べられてそれは当たり前だと思うからです。でも、これを何とかして、980円で松坂牛でできている牛丼が食べられますとしたら、これは、バカ売れする商品になるかもしれないですよね。なので、まず最初に”良い商品を持っている”という勘違いをしていないか?ということを考えるべきです。仮に、質以外の点でも、良い商品ができたとしましょう。そのあとの展開ですが、基本的に商材による部分もあります。展開の仕方は一律ではないと思います。
ただ各社共通して意識すべきことをご説明いたします。
1、 よい商品=他社にない価値のある商品なので、メディア掲載の確率が高いはず。
そのため、広報戦略に力を入れるべきです。ベンチャーや中小企業であればあるほど、広報と無縁の会社が多いわけです。ただ、もしメディアにあなたの商品が取り上げられたらどうでしょうか?何十万、何百万人の人に一気にあなたの商品が認知されるようになるわけです。資金のないベンチャーや中小企業ほど、メディアをうまく活用する視点を持つべきです。
2、 営業力の強い他社企業とのアライアンスや代理店の仕組をうまくつくって展開していくということ。既に、自分の商品のユーザーを多数囲っている企業などとのアライアンスをつくっていくことで、自らは0から顧客開拓をしなくて済むようになります。そのため1社1社、1人1人のエンドのお客様にアプローチする視点ではなく、その1社1社、1人1人のエンドのお客様を囲っている企業などに注目すべきです。
3、 WEBマーケティング、コンテンツマーケティングを活用したWEB系の施策も必須だと思います。WEB上に販売の仕組をつくることは財産にもなりえます。例えば、DMを1回打ったとしても、ほとんどのDMは捨てられてしまい意味を失います。しかしWEB上にページを作成し、検索にしっかりと引っかかるようにしておくと、これは1枚のつくったDMが長い間、人に見られ続けることになります。今やどのような業種であってもWEBの活用を前提に販売を設計することも大切だと思います。
第2位は『優秀な人材の確保・人材育成』です。特に高収益企業が力を入れているようです。お金をかければ、『優秀な人材の確保・人材育成』は割と簡単にクリアできるような気がしますよね。実際に高収益企業はこの課題をクリアするために、「積極的に賃金を高めていきたい」と回答しているようです。ただ、あまり費用を割けないスタートアップ企業などは、どのようにこの課題をクリアすれば良いのでしょうか?お金をかけないでもクリアする方法はあるのだろうか?
よく言われる話ですが、お金をインセンティブにして会社に入社してくるタイプの人はベンチャーやスタートアップの考え方にはあいません。そのため、そもそもそのような人は採用対象にはなりません。ベンチャーやスタートアップにあるものというのは、お金ではなく、大きな夢やワクワク感、つくりあげていく感じ、一体感、発展途上、可能性などです。このようなキーワードや価値観を大切にしている人が採用のターゲットになります。
採用力というのは、明らかに金銭の大きさではなく、会社のお客様貢献度や社会貢献の大きさなどによるところも多いと思います。ベンチャーやスタートアップは、とにかく自社サービスをうまくいかすこと、サービスの本質部分にフォーカスして面白いサービスをつくるべきです。また、まだまだ会社の制度などがきっちりと出来上がっているわけではないので、会社文化や制度が柔軟であることも、強みにすべきです。
職場環境などもまたある意味、商品だと捉えて、働く人もお客様だとして、魅力的な商品=会社をつくるという発想も大切かもしれません。ただし、やはり最終的に重要なことは、採用できるかどうかでなく、採用した人が、会社にとって高い忠誠心を持って、働き結果を出してくれるかどうかです。そのために一番大切なことは、会社が求めている人物像を明確にすべきです。
会社サイドが意外と、人物像などを明確にできていないケースも多々あり、曖昧な採用活動をしているケースも散見します。最初の頃の採用は、自分の知っている人や、信頼できる人からの紹介に絞ることもよいかもしれません。採用コスト(時間、費用、結果を出してくれるまで)はとても大きいです。一定の成長まで実現すると、その後、人の壁に企業はぶつかります。そこを乗り越えられない企業も多くいます。1人目、2人目は信頼筋からというのもよいかもですね。
第3位は『既存顧客・販売先の見直し』です。特にこの項目は、低収益企業が圧倒的に多く回答しました。”見直し”というのは具体的にどのようなことをいうのでしょうか?既存顧客・販売先はそれとして売り上げがでているのであれば、どんどん新規開拓をしていった方が良いように思えますが、何かここにコツがあるのだろうか?
低収益企業の問題として、販売先に問題があるのか?ということを検討しなくてはいけません。そもそも圧倒的に利益率の低いものを販売しているのかもしれません。その場合には、商品の価値を引き上げて、単価を変えるか、原価を抑えるしかありません。中小企業の場合には、顧客との関係性において、イニシアティブ(交渉上の優位性)を持っている企業がかなり少ないわけです。そのため仕入れが高いのに、販売価格が安いといったことが多々起きえてしまうわけです。このような状況は独立経営として、よくはありません。
そのため利益率を改善するためには、イニシアティブをとれるようにならなくてはいけません。イニシアティブは、独自の価値や技術を持っているかどうかによってきます。そのため、1つは商品やサービスを磨くこと尽きます。どこでも買うことができるようなありきりたりのものを扱っていてもジリ貧になっていくだけです。既存顧客や販売先の見直しというのは、商品自体を変更し、利益率を改善できないかということで対象自体を変えてしまうことや、工数がものすごいかかっているお客様に関しては値上げをしたり、サービス提供を打ち切ったりといったような見直しまで多々あります。
また、既存のお客様に対して、今の商品以外で販売できるものがないか、既存のお客様が実際に何に困っているのか?ということを調査し、商品開発などにあてることもあり得ます。新規のお客様にばかりを相手にしていると、サービスの改善などがみえてこないのと、今の商品のPDCAを回すことができません。商品は一度つくって終わりではありません。どんどん改善していく仕組みを、販売しながらセットする必要があるわけです。そのため、新規のお客様に販売し続けることだけが選択肢ではありません。