自身の確固たるビジネスプランを既に持っているまたは、ある分野でビジネスをしようと考えている起業家予備軍の方は多いことでしょう。ですが、会社設立後のビジネスプランには頭をフル回転していても、設立までの費用面については、あまり深く検討したことは少ないのではないでしょうか。今回は会社を設立してから実際に業務を始めることができるようになるまでの時間に必要と予測される資金について確認していきましょう。
今回は年間法人設立数の中でほとんどを占める株式会社と合同会社にフォーカスしていきます。
インターネットで検索すると数多くのホームページがヒットするので自然と考えが刷り込まれている可能性もありますが、会社設立は司法書士・行政書士・税理士といった専門家に依頼しなければ無理だと考えている人がいるかもしれません。会社設立は別に専門家に依頼しなければ不可能なわけではありません。会社の代表者となる、あなた自身が書類を作成して行うこともできるのです。
ただ、問題になってくるのは専門家に依頼した場合には、報酬を支払うことであなた自身は事業のことに集中できるのに対して、自身で設立手続きを行う場合には事業以外に設立手続きのための時間と手間を取られることとなります。専門家に依頼するコストと依頼によって確保できる時間を天秤にかけたうえで、あなたの事業にとって最適な方法を選択してください。
専門家に任せる場合には、定款作成から登記まですべてを任せると思いますので、報酬例はすべてを任せたケースを記載しています。ネット検索すればわかりますが、設定されている報酬額は様々であり、安い高いで決めるのではなく、用意されているプランを隅々まで確認してから依頼するようにしましょう。また報酬はあくまでも専門家に支払う報酬だけであり、登録免許税など他の設立経費は含まれていませんので注意してください。
☆4,680円
☆14,800円
☆19,800円
☆24,800円
☆36,500円
ここでは5種類ほど設定されている報酬額をあげました。あくまでも報酬の例ですので、おおよそ5万円以内が専門家に依頼した場合に必要になると考えておくと安心です。
定款とは、会社がどのような事業を行うかを含めて、根本的な重要事項を記載している国でいうと憲法のような存在であるといえるでしょう。紙文化である日本ならではのことかもしれませんが、紙で定款を作成した場合には、定款には4万円分の収入印紙を貼り付けなければいけません。それに対して作成してデータで保管する電子定款の場合には、収入印紙を貼り付けることができませんし、紙ではないということで収入印紙を貼り付ける必要がありません。結果として電子定款を利用することで4万円分が節約できることになりますので、開業前のコストが厳しい段階では電子定款を利用することをオススメします。
さらに株式会社の定款の場合には公証人に定款を認証してもらわなければいけません。この費用は紙定款でも電子定款でも変わることはなく5万円が必要になることも覚えておきましょう。
電子定款は自分で作成することもできますし、専門家に任せることもできます。電子定款を作成するには、電子証明書とPDFファイルに電子印鑑を押印することのできるAdobe・Acrobatというソフトが必要となります。また、電子証明書は電子印鑑を押印するために必要なもので、証明書の有効期間によって変化しますが、2年間の有効期間で約2万円弱が必要となります。さらにPDFファイルに押印するのに必要とされるAdobe・Acrobatも結構な金額がかかります。下記にAdobe・Acrobatの使用料金を紹介しておきますので、参考にしてください。
会社も今後もいくつも設立していく、シリアルアントプレナーとして活動するつもりのある方以外には電子証明書とAcrobatを揃えると約4万円~6万円となりますので、1回の電子定款作成のために準備するのはコスト面でもったいないと言えるでしょう。行政書士・司法書士などの専門家に電子定款の作成を依頼した場合には、定款の内容を自分で作成して、電子証明書だけをお願いするのであれば、5千円~1万円で行ってもらうことが可能です。
Adobe・Acrobatの使用料金
Adobe・Acrobat・Pro・DC「12カ月版18,960円」「36カ月版45,560円」
Adobe・Acrobat・Standard・DC「12カ月版16,560円」「36カ月版37,260円」
Adobe・Acrobatにはパッケージ版とダウンロード版が発売されています。
法律(会社法)の改正により、設立時の資本金が1円からでも可能となりました。ちなみに改正前は最低資本金額が有限会社は300万円・株式会社が1,000万円となっていました。ただ、1円の資本金で会社を設立することができるようになったとしても、あなたの目的は会社の設立がゴールではなく、設立してあなたしか行えない事業を展開することが目的であるはずです。実際に1円の資本金で会社を設立して事業を始めた場合には、最初の難関として予想されるのは、会社の口座を金融機関にて開設するときになるかもしれません。最近は会社の口座をマネーロンダリングなどの不正に利用されることが横行しているだけに、金融機関は特に法人口座に対しては非常に神経質となっています。
その状況の中で資本金1円の会社で口座開設依頼をした場合には、資本金が1円の理由や、本当に経営していけるのかなど、本来は聞かれなくていいことまで聞かれた挙句に当行では口座は開設できませんともなりかねません。また、取引相手に対しても資本金が1円では、何かアクシデントが発生した場合に、この会社の資金力で大丈夫だろうかと疑われてしまうこともあるでしょう。ですから、設立時の資本金は実際に使用できるお金だけでなく、現物出資の制度も利用して、100万円程度の額にしておくと、対外的な信頼性が保たれてスムーズに事業活動を行うことが可能となるでしょう。
会社を設立するまでの書類から設立後の許認可申請の書類などにも欠かすことができないのが法人の印鑑となります。設立時に揃える法人の印鑑は個人と同じように登録を行う「実印」、金融機関口座開設に使用する「銀行印」、領収書・請求書など日常的な業務に使用する「角印」の3つを準備しておきましょう。ネットで「法人印鑑作成」と検索すれば、印鑑作成業者はたくさん見つかりますので、その中から最適なものを選択するといいでしょう。価格は安いもので1万円以下から高いもので5万円弱のものまで材料によって様々です。注意すべき点として「実印」は割れたりして他の印鑑にした場合には、また届け出を行う必要がありますので、ある程度丈夫な材質で印鑑を作成しておくといいでしょう。
会社を設立して事業をおこなうには、法務局で登記をしなければいけません。その時に必要となるのが登録免許税というものです。株式会社と合同会社に必要となりますが、法律で資本金の0.2%が登録免許税の金額となっています。しかし、登録免許税には最低金額が決められており、株式会社では13万円・合同会社では6万円が最低金額となっています。設立時の登録免許税が最低金額以上となるケースは起業家が最初に設立する会社ではなかなかありませんので、株式会社は13万円で合同会社は6万円と覚えておくといいでしょう。
いかがでしたでしょうか。今回は会社を設立する際の必要な費用について確認してみました。上記の他にも事務所の賃貸料金など、考えればいろいろと会社を運営するためには費用が必要な事は理解できると思います。専門家に依頼する場合や、会社の形態(株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人・一般財団法人)などによって必要となる費用を含めて違ってきますので、あなたの事業に最適な会社形態を理解したうえで、事業を成功に導いてもらいたいと思います。