地方で起業を考える場合、跡取り問題に悩む企業のM&Aは有力な候補となります。また、地方全体が地域活性化のために企業を呼び込んでおり、地方での起業は歓迎されやすいというメリットも無視できません。このように地方起業は様々な魅力を有しており、起業するにあたって検討する価値は充分にあるのです。そこで、地方が抱える問題が起業にどう結びつくのか確認してみましょう。
中小企業の多くが後継者不足に悩まされています。地方から若者が流出し、多くの企業が人手不足が原因で会社を畳まなくてはならない現状に追い込まれているのです。また、地域密着型の中小企業は、廃業することで地方の産業基盤に大きな影響を与えます。事態が深刻な自治体の中には存続すら危ぶまれている地域もあり、中小企業が存続するか否かは地域の将来性を揺るがす大問題なのです。中には黒字でありながら廃業に追い込まれる企業も少なくありません。次の後継者が決まらないまま経営者が年齢を理由に一線を退き、倒産する前に廃業を選ぶことで最悪の事態を避けた結果です。
いわゆる職人が働く工務店なども、同じ理由で廃業に追い込まれています。厳しい世界のため元々後継者が育ちづらいという背景もありますが、せっかくの技術が後継者を見つけられなかったために失われる恐れがあるのです。仮に技術を受け継いだ職人がいたとしても、経営者としての能力に恵まれているかはわかりません。新しい技術との折り合いをどう付けていくのか、人口減少が予想される地方でどう収益を上げたら良いのか、地方における後継者のハードルが高くなっていることも事実なのです。
また、経営者にとって第一に考える後継者は自身の子供です。しかし、現代は無理に子供が親の会社を引き継ぐ時代ではありません。親には親の、子供には子供の人生があるという意識は下の世代になるほど強く、それ故に後継者不足に陥る会社が増えている事実も無視できないでしょう。仮に子供が引き継いだとして、資質があるかはわかりません。跡継ぎとなる子供の数が減り、なおかつ資質の有無も見極めなければならないとなると、より一層地方の中小企業が抱える問題は大きくなります。規模の小さな中小企業はなおのこと経営者の影響力が大きく、経営者の手腕で成り立っている可能性もありえます。
このように、跡取りが不足している企業は中小企業を中心にたくさん存在します。しかし、廃業だけが選択肢ではなく、M&Aも一つの選択肢となりうるのです。売り手からすれば、地方の中小企業に買い手がつくほどの価値があるのかと疑問を抱きがちになりますが、売り手が気付いていない魅力を企業が有している可能性は大いにあります。例えば、地方なら豊かな自然を売りにし観光資源として有効活用できます。せっかく人が集まるかもしれない観光資源を後継者問題で無駄にすることもありませんし、売り手と買い手双方にとってメリットのある選択肢なのです。また、会社を譲り受ける側にとっては、すでに基盤が整っている状態で経営できるため戦略を立てやすいという利点もあります。従業員はそのまま引き継がれますし、ある程度収益の目処を立てることもできます。
スタートラインに立つ期間を短縮できるので、今すぐにでも地方起業を始めたい方にとっては効率的な手段と言えるでしょう。今まで有効活用できていなかった資産も、新しい血が入ることで見方が変わり、有益な資産に早変わりすることも珍しくありません。M&Aをするには相当な元手が必要なのでは、と考えて二の足を踏んでいる起業者もいるかもしれませんが、規模の小さな企業なら数百万円で事業を譲り受けることも可能です。また、起業後数年間で倒産に追い込まれる企業も少なくありませんが、すでに事業を開始してしばらく経過している会社を買い取るなら話は別です。すでに成功している企業を買い取ってからスタートできるので、起業後に対する不安をある程度払拭したまま経営を始められます。
売り手からしても、様々なメリットがあります。従業員や後継者候補に身内や友人が多い中小企業では、個人保証のリスクまで後継者に負わせたくないと考えている経営者も少なからずいます。M&Aならやる気のある買い手が保証を受け継いでくれますし、周囲に迷惑をかけることもありません。黒字化したままM&Aを行う場合、創業者利益を得られるのも売り手側のメリットでしょう。売り手としてもM&Aは決して悪い選択肢ではないからこそ、多くの中小企業が後継者問題の解消にM&Aを選択しており、結果的に買い手側の選択肢も増えているのです。
起業時の心強い味方となる補助金や助成金ですが、これらを地方自治体が独自に主催しているケースも数多く存在します。補助金にどれだけ注力しているかは自治体にもよりますが、地方活性化に力を入れている自治体ほど手厚いサポートが期待できます。調達した金額次第では、数百万円もの補助金を起業に必要な費用に使用できるため、あるとないとでは大きく違うことは確かでしょう。さらには、これら補助金は返却する必要がありません。起業する側にとって非常に美味しい条件が整っているので、できる限り多くの補助金を獲得することが少しでも経営にゆとりを持たせられるかの分水嶺となります。
また、助成金は何かしらの条件を満たすことで支給され、補助金は事前に審査が設けられます。どちらも起業するなら無条件で、とはいかないため、必ず目ぼしい助成金を見かけたら条件を確認しておきましょう。他にも、交付される金額が毎年同じとは限りません。財政の影響で金額が増減するのが常なので、その点も折り込みながら起業後のプランを考えていく必要があるでしょう。交付されるのがいつになるのか、という問題も無視できないため、補助金の扱いは慎重に行うことが大切です。
自治体ごとにどんな補助金を交付しているかは、主に地方自治体のホームページから確認できます。疑問点があれば直接自治体に確認をして、万全の体制で起業すると良いでしょう。自治体ごとに注力している事業の分野も異なるため、自分が起業したい分野と自治体の力を入れている分野が合致しているかどうかも確認が必要です。