地域の歴史、文化そして防災の要であるお寺を未来に残す:INACOMEビジネスコンテスト受賞者インタビュー

INACOMEでは、ビジネスモデルからはくみ取りづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。

今回は、令和4年度INACOMEビジネスコンテストにおいて、「サウナ×お寺で地域活性化。お寺を持続可能な農林業の中心に!」のテーマでプレゼンを行い、特別賞を受賞した宗教法人大泰寺の西山十海さんにお話を伺いました。

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お寺の抱える課題を知ってもらい、興味を持ってもらうために

――昨年度の「INACOMEビジネスコンテスト」への参加のきっかけを教えてください。

お寺を活用した地域活性化に興味を持ってくれる方を増やすため、まずは全国の約1/3のお寺に住職がいないという現状を知ってもらいたいと考え、ビジネスコンテストに参加しました。

数年前から大泰寺において宿坊やキャンプ、サウナなどの取り組みを始めています。これをモデルケースに全国の住職がいない無住寺院を存続するため、横展開を図っていく予定です。ただ、1人では広げていくスピードが上がらないという課題があります。そこで、施設のリフォームや運営管理などへの参入に興味を持つ企業や団体等と出会うため、自分たちの取り組みに親和性が高い農山漁村発のINACOMEビジネスコンテストに挑戦したいと思いました。

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――コンテストに参加してみていかがでしたでしょうか。「特別賞」の反響などもありましたか?

今回、特別賞をいただけたことは自信となりました。しかし昨年10月頃からインバウンドが戻り宿坊やサウナが忙しく、なかなかINACOMEビジネスコンテストで出会った方と何か一緒に、というところまでは進めていない、という状況です。でもコンテスト会場で出会った参加者のなかにサウナ好きの方がいて、サウナがきっかけとなりご縁をつないでもらうことができました。

横展開のためにまずはノウハウを貯めていく

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――発表から約5ヶ月ですが、変化等はありますか?

サウナに来ていただいた方々のお寺への興味を引き、お寺について知ってもらう取り組みを始めました。お寺というのは個人が持っている古民家などとは異なり、その土地の歴史や文化を象徴する建物です。お寺を知ることでその土地を知ってもらえたら、と思います。

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そしてお寺の整備は地域の防災にもつながります。地方のお寺は地域の避難所に指定されていることも多いため、宿泊施設として整えることで、避難所としての機能が高まります。地域住民の手で今はどうにか維持しているお寺も、過疎化や高齢化のため段々とそれが難しくなってきています。災害などの時にすぐに使えるようにするためには、普段から何かしらの形で利用していることが大切です。お寺の立地や条件は異なりますので、それらに対応するべく、今は大泰寺でさまざまな活用方法を試してノウハウを貯めています。先日も無人のお寺の利活用についての調査事業で企業と組み、国のモデル事業に採択いただきました。

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お寺を地域課題から地域資源へ

――今後の展開を教えてください。

例えば直近の月間宿泊数(実人数)の110人中91人と約8割が海外の方だったこともあり、海外の方に魅力が伝わってきていると感じます。しかし、反対に国内の若者に興味を持ってもらうためには何か仕掛けが必要です。サウナはその点とても良いと感じています。温泉とは異なりサウナはどこでも設置ができるので横展開しやすく、初期投資が少ないのが魅力です。今後はサウナ後に景色を眺めながらその地域の特産品をいただくなど、地域の魅力を伝えられる仕組みを強化していきたいです。

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お寺と言うのは、その地域の集落の中で一番目立つ場所にあります。それを起点として地域の防災の要だけではなく、地域の魅力を掘り起こし新たな人の流れを創出していきたいです。無人となってしまったお寺が地域の課題になるのではなく、地域の資源として再生するモデルケースとして全国に横展開していきます。

<リンク先>

・宗教法人大泰寺(外部Web)