水産資源を最新技術で有効活用:INACOMEビジネスコンテスト受賞者インタビュー

INACOMEでは、ビジネスモデルからはくみ取りづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。

今回は、令和4年度INACOMEビジネスコンテストにおいて、「青ヶ島の水産資源×NFT×WEB3=ブルーエコノミー3.0」のテーマでプレゼンを行い、特別賞を受賞したJYPC株式会社代表の岡部典孝さんにお話を伺いました。

コンテスト参加を通して村での信頼を高める

――昨年度の「INACOMEビジネスコンテスト」への参加のきっかけを教えてください。

2022年12月に移住した青ヶ島は、人口167人という日本で一番人口が少ない村で、このままでは無人島になる可能性があります。この危機をどうにかするためには、島で仕事をつくり、若い人が活躍できることを目指す必要があると考えました。そして島であること、村に漁業組合があることなどから、漁業を中心に私たちの専門領域であるNFT、WEB3と掛け合わせたビジネスを立ち上げることにしました。

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青ヶ島は東京から360キロ離れており輸送コストが高く不安定で、本来高級魚のマグロや鯛なども鮮度の問題から未利用魚になっているという課題を解決するため、まずは水産加工場をつくるところから始めました。また私たちの専門領域であるWEB3技術のNFTによる「ふるさと納税」や「日本円ステーブルコイン」を活用することで、クラウドファンディング(しかもこの場合は手数料がほぼ0に近い)のように、郵便局以外の金融機関がない青ヶ島でもブルーエコノミーを盛り上げる資金集めが可能になります。

そのためには発起人を複数人集めて水産加工業共同組合をつくる必要があるほか、さらに工場の土地を貸してもらうなど、村の方々の協力が不可欠となります。新しく村に入ってきた人が新しいビジネスを立ち上げたい、とただ言っても理解を得るまでにはどうしても時間がかかります。そんな時に「INACOME ビジネスコンテンスト」の存在を知り、ここで認められたら、協力を得やすくなるのではと思い、応募しました。

受賞によりビジネス立ち上げが大きく前進

――実際に「特別賞」を取られて、期待していたような協力は得られましたか?

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これまではあまり伝わっていなかった漁業への本気度が受賞によって伝わり、漁船に乗せていただき、漁業組合にも参加できるようになりました。また水産加工業共同組合の方も設立に向けての協力者も得られて、事業の立ち上げが想定以上に早く進み、応募の目的を果たしたと感じています。

また、メディアでもNFTの活用事例ということで取り上げていただきました。青ヶ島移住の検討段階の2022年9月、会社にブルーエコノミー推進室を立ち上げ、理論的なことだけではなく事業として実践をしているということから、他の企業のヒアリングを受けたり、登壇したりする機会もいただきました。

――発表から約4ヶ月ですが、変化等はありますか?

まず会社の定款を変更し、5月に法人で青ヶ島の漁業組合に入りました。水産加工業共同組合では協力者の人数は集まりつつありますが、立ち上げるためにはいくつか要件があるので、特にハード面での要件クリアに向けて動いている状況です。

島国日本だからこそ海を最大限に活用していきたい

――今後の展開を教えてください。

漁業組合に参加させてもらうようになったので、私たちの働き方が二拠点居住で漁業を副業にするモデルケースになると思います。そしてこのような働き方を希望する人にぜひ青ヶ島に来てもらいたいです。そのためにまずは宿泊できる場所をつくろうと計画しています。今後は立ち上げている漁業を中心としたビジネスであたらしい産業をつくり、青ヶ島を存続、発展させていきたいです。

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また私たちだけではなく海を活用したい人たちが、養殖・加工したり、レアメタルを利活用したり、洋上風力発電など海でビジネスを起こすことで、日本をもっと豊かな国にしていきたいという最終的な狙いがあります。そのためには実証実験が必要になり、それを青ヶ島の沖合でできないかと考えています。夢は、国土の10倍ある海(排他的経済水域)をもっと活用し、海でイノベーションを起こすことです。

<リンク先>

・JPYC株式会社/青ヶ島の水産資源×NFT×WEB3=ブルーエコノミー3.0情報(外部Web)