地域で活躍する多様な起業家を特集するこの企画。昨今、「生まれたまちに貢献したい」と地方に魅力を感じている若者が増えています。今回は、和歌山県を代表して、一般社団法人kumano.coの川端佑典さんにお話をお伺いします。
ーまずは川端さんの会社の紹介からお願いします。
川端)こんにちは。一般社団法人kumano.co 代表理事の川端佑典です。kumano.co(くまのこ)は、世界遺産「熊野古道」で有名な熊野と呼ばれる地域の魅力を発信することで、仕事を生み出し、その結果、若者が地方で生きる・働く選択を当たり前にできる社会をつくることに取り組む集団です。私たちは熊野と呼ばれる地域の中でも、和歌山県田辺市本宮町を拠点に、飲食店「くまのこ食堂」やゲストハウス等の事業などを通じて、熊野の魅力を発信していきたいと考えています。
ー由緒ある地域で活動をされていることですが、川端さんは元々、田辺市のご出身だったりするんですか?
いえ、私は大学生になるまで、田辺市とは縁もゆかりもありませんでした。当時通っていた、関西大学のプログラムで大阪府堺市の子どもたちと一緒に、田辺市を訪れるというものがありました。そこが田辺市と最初に関わり始めたきっかけです。その後、毎年のように田辺市に訪れるようになりました。地域の方々と接していく中で、地域の方々に対して「カッコいいな」という憧れや尊敬の念を持つようになり、自分もこの地で何かチャレンジをしたいと思うようになったのが、起業したきっかけです。本当に起業が現実味を帯びてきたのは、2017年の夏でした。自分たちで物件を見に行ったりしているうちに、ますますイメージが湧いてきて決断することにいたりました。
ーそういう背景があったんですね。ちなみに、大学生の時から起業しようと思っていたんですか?
いつかは起業をしようと思っていたんですが、普通に就職をする予定でした。学生時代は、いくつものベンチャー企業をインターン生として渡り歩いていました。当時、インターンをしていた会社でそのまま就職する予定だったんですが、会社が倒産してしまい、その後どうしよう?と考えていたときに、大学の先輩・後輩と一緒に起業をすることを決断しました。ー地域でビジネスをやるということは、これまで居たベンチャー企業とは真逆のような環境だと思うのですが、何故、このフィールドに飛び込んだのですか?
それは、都会にある企業が見落としている”市場”が地域にあったことや、自分たちじゃないと出来ないと思える”テーマ”が地域にあったからです。私は19歳のときに、世界一周を経験しました。当時、諸外国と日本を比べてみたときに、日本の経済は「沈みゆく船」のように、衰退していることを肌で感じました。ただ、日本の持つ歴史や文化というものの価値は、非常に可能性があるなと思ったんです。おそらく、これから多くの地域は衰退し、消滅していく可能性があると思っています。しかし、テクノロジーが発達して、人がどこにでも住める時代がやってきたときに、人々の移住先の選択肢に地方が入ってくると思いました。
また、日本という国だけで考えると地方の現状は悲観的にみえてしまいますが、世界の視点から考えると大きな可能性があるなと思っています。
実際に今、熊野古道はインバウンドの入込客数が増えてきています。しかし、供給する側のプレイヤーは少なくなってきているので、自分たちのチャレンジするいい機会だなと思っています。現在は、飲食店も経営しいるんですが、僕たちがお店をOPENするまで本宮町には、「夜ご飯」を食べれる飲食店がありませんでした。そして、本宮町には地域で活動していく若者が少なかったんです。だからこそ、「俺たちがやらないと」と強く思えて、実行まで移せたんだと思います。

ゲストハウスには、外国人観光客も訪れる
ー確かに、地域というのは見落とされがちではありますが、沢山のチャンスが転がっていますよね。
ちなみに、kumano.coとしては、今後様々な事業を手かげていきたいとお考えだと思いますが、何故、最初の事業を「飲食店」にしたんですか?

ある日のくまのこ食堂の定食
飲食店と言うと、食事やドリンクを提供するだけと考えがちなんですが、私たちは、「飲食店」をある種プラットフォームのようなものだと思っています。様々な人が集い、地域内外のあらゆる情報が集まってくるというのが飲食店の魅力でもあるなと思っています。僕らが飲食店を選んだのは、大きく2つの理由があります。1つ目は、これから地域であらゆる事業を仕掛けていく上で、「コミュニケーション」が生まれる場所を作りたかったということです。人と人が繋がり、コミュニケーションを取ることで、鮮度の高い情報が入ってきたり、逆に伝えていったりすることで、良いアイデアを生み出すことができます。
2つ目は、地元の人と繋がるために「目に見える取り組み」を行いたかったからです。
地域の人から信頼を得るためには、「目に見える取り組み」を行う必要があると考えていました。僕たち世代だと、ネットで何かやったりするのが潮流ではあると思うんですが、地域の人にとっては、「何やってる奴か分からない」ってなるんですよね。飲食店のような分かりやすく、誰でも出入りできるような拠点を作ることで、地域の方々に応援してもらえるようになりました。いまでは「若者が頑張っている」というのでいろんな情報を教えてくれたり、時には手伝ったりしてくれたりしています。
ー地域の人から信頼を得るということは、地域で事業をする上で大きなカギを握る部分ではありますよね。ちなみに、川端さんと地域の方々はどのような関係性なんですか?
有り難いことに、地域の方々にはたくさん応援していただいています。特に、地域のキーパーソンと言われるような方が熱心に応援していただいているので、私たちの活動も比較的やりやすかったりします。ただ、はじめからそうだったわけではありませんでした。地域の方々との良好な関係を作るためにのコミュニケーションを欠かさないように意識をしていました。例えば、ちゃんと「挨拶をする」とか、地域の掃除や祭りとかに参加するとか、困っていることがあれば相談をするとか、小さいことかも知れませんが、基本的な部分をしっかりすることを心がけていました。それが功を奏して、地域の方々に応援してもらえることに繋がったのだと思います。こういったアナログなことをやっていけるかどうかが、地域で活躍できるかの鍵なのかもしれません。

地域の方から農業を教わっている光景
ー小さなことからコツコツとやっていく姿勢を見て、応援に繋がったわけですね。
川端さんのように地域の方に応援されていると、いろんな地域の良さを享受していると思うんですが、具体的にはどのようなものがあったりしますか?
まず挙げられるのは、地域には、自分たちの困りごとを発信をすると助けてくれる人が多いということです。例えば、DIYをしていたときには、木材を譲ってくれた人がいたり、食材が足りなくなってしまったときは、食材を分けてくれた人がいたりしました。こういった形で、支えてくださる方がいるから、私たちは地域で継続して取り組み出来ているんじゃないかなと思っています。あとは、地域には競合他社となるプレイヤーが少ないので目立ちやすい部分はあります。
例えば、新しいチャレンジを始めると大体テレビや新聞が取材に来てくれたりします。東京や大阪でやっていたら、そんな機会はないかも知れないけども、地方ならそういった形で取材を沢山していただけるのは有り難いですね。ただ、メディアに取り上げられるほど、「虚像」が出来てしまい、現実と乖離してしまうという部分は少し難点ですが。
ー確かに、目立ちやすいというのはありますよね。では、一方で地方でビジネスをしていく中で、ネガティブに感じる部分ってあったりしますでしょうか?
その部分で言えば、自分たちに近い境遇の先輩がいないと言うことですかね。今、地元に残っている人というのは、「仕事や家業」があるから残れていると思っているので、地域内に自分たちのように、「仕事を作っていく」人たちが少ないというので、相談が出来なかったりする部分ですかね。ただ、有り難いことに地域外にはベンチャー企業時代の仲間や、高野山であった地方創生会議などで知り合った人たちが居て、彼らと継続的に情報交換をしたり、相談をしたりしているので、地方に居てもいろんな情報を得ながら活動できているなと思っています。
ー最後に読者の方に一言いただけますでしょうか?
これからの時代は、一人ひとりが自分の生き方を見つめ直さないといけない時代になってくると思います。自分にとっての「幸せとは何か?」「豊かさとは何か?」という事に向き合う必要性が出てくると思います。そんなときは、是非kumano.coに来て、ヒントを探しに来てくれればと思います。皆さんに来ていただくのをお待ちしています!
Twitter