【INACOME起業者紹介】大学発!規格外野菜のパウダー加工で解決する食品ロス(崇城大学大学院・平田竜一さん)

INACOME

農山漁村の活性化に向けて、地域起業者の交流を促すプラットフォームINACOME(イナカム)。ビジネスモデルからは把握しづらい起業者の想いやビジョンを広く知っていただくために、INACOME参加起業者のインタビュー記事を掲載します。今回は、本年2月のINACOMEビジネスコンテストにおいて、「規格外野菜を用いた機能性パウダーの開発・販売」をプレゼンし、来年の登記を目指して事業化を進めている崇城大学大学院の平田竜一さんにお話を伺いました。

野菜の可能性を引きだすパウダー加工

-どのようなビジネスモデルを計画していますか。

形が悪かったり、実が割れてしまった規格外の野菜をパウダーに加工し、甘味料として販売する事業を計画しています。例えば、私が暮らしている熊本県はトマトの生産量が全国一位ですが、果実が割れるなどして廃棄されてしまうものも少なくありません。そこで、規格外や廃棄予定のトマトを加工し、スープに入れて楽しめるパウダーの商品化を目指しています。

このパウダーは、例えばコンソメスープに入れることでトマト味が追加され、ミネストローネのような味になります。他にも、デコポンなどのかんきつ類を原料にしたパウダーを作ってデザートなどに使用してもらえたらと考えています。私は現在大学の修士課程に在籍していますが、博士課程でもこのテーマに取り組みながら、来年の登記を目指して研究と起業準備を進めています。

-このパウダーにはどのような特徴がありますか。

一般的な甘味料は人工的に合成されているものがほとんどですが、私が研究を進めているパウダーは、野菜など天然素材のみで作ります。野菜に含まれる風味や色、香り、機能性が付与された、野菜の特徴をいかしたパウダーを作ることができます。さらに、甘味料の研究開発のほか、野菜に含まれる糖を酵素の力で分解・合成させて、野菜がもつ色、香り、味、機能性を付加した新しいフラクトオリゴ糖を作る研究を進めています。

フラクトオリゴ糖は善玉菌を増やす効果があるほか、人が摂取しても体内に吸収されず、カロリー制限をしている方でも食べることが可能です。血糖値の上昇も防げるので、健康食品や病気の予防策としてもご活用いただけます。

きっかけは食品ロス問題

-パウダーの開発にあたり規格外の野菜を活用したいと思ったきっかけを教えてください。

実家が農家で、よく農作業の手伝いをしていましたが、規格外の野菜が多く出ている現状を目の当たりにし、味は変わらないのにもったいないと思っていました。そんな中、食品ロス問題について調べる機会があったのですが、日本における食品ロスについて、国民一人当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てている計算になることを知り、衝撃を受けました。そして、食品ロス問題は自分が研究している分野と結び付けられると思い、この課題を解決したいと思うようになりました。

-食品ロス問題と平田さんの事業はどのようにつながっていますか。

例えば、市場に行くと売れ残っている野菜がたくさんあり、出荷したのに消費者まで届かなかったという事実にショックを感じます。また、令和2年7月豪雨の被災地である人吉市にボランティアで入り農業者の支援を行いましたが、ビニールハウスを撤去した際、オクラが成長しているのに出荷できない現状を目の当たりにしました。機能性パウダーに加工することで規格外野菜に新たな価値を持たせることができ、生産や流通の段階で発生する食品ロス問題の解決や、新たな市場獲得を通じた農業者の所得向上につなげたい、という思いが事業の根本にあります。

-民間企業等への就職ではなく、起業する道を選んだことについて迷いはありませんでしたか。

私が師事している教授とも相談して、起業の道を選びました。私が通う崇城大学では起業家育成プログラムが充実しており、事業化に当たって大学から資金面の援助を受けることができ、教授に事業の相談ができる体制も整っています。周囲にも起業を志す学生を見つけやすく、事業の仲間探しにも適しています。私自身も大学一年生の時から「起業部」という起業活動を行う部活動に所属し、多くの先輩方から刺激を受けてきました。こうした背景もあり、自分の手でこのパウダーを商品化したいと思うようになりました。実家が農家というバックグラウンドから、農業で何かしたいという思いも起業につながっていると思います。

パウダー加工で広がる可能性

-将来はこのパウダーをどのように展開していきたいですか。

世界の栄養問題にもこのパウダーは役に立つと思っています。例えば、野菜は出荷できる範囲に限りがありますが、パウダーにすることでより遠くに出荷することができ、途上国にも届けることができます。また、パウダーはお酒造りの際に出る搾り粕等でも生産可能なため、例えばフランスなどワインの生産が盛んな地域でもブドウの搾り粕からパウダーを現地生産できることから、活用の幅が広がります。

さらに、地元の熊本県は球磨焼酎が有名ですが、焼酎粕がたくさん出ることから、焼酎粕をパウダーにすることで有効活用を図りたいと考えています。野菜は糖分が多く甘いですが、焼酎はクエン酸が多く酸味のあるパウダーを作ることができます。 野菜から甘味料を、焼酎から酸味料を作ることで、新たな調味料開発を目指しています。

農山漁村の活性化に向けて、地域資源を活用した起業者を支援するイナカム。プラットフォームでは、平田さんのように地域課題を解決するために新たなチャレンジをする方々と結びつくことが可能ですので、是非ご活用ください!